赤い風車
NHKのBSで 「赤い風車」 という映画が放映された。
監督が誰で、主演が誰で、アカデミー賞が、なんて言い出すと映画好きの知識をひけらかすことになってしまうので省略。
この映画は画家ロートレックの生涯を、当時の忠実な風俗とともに映画化した作品である。
ロートレックというとリトグラフの先駆者でもあるし、当時のリトグラフ制作の場面も映画のなかに登場するので、ぜひ熊本のKさんにも見てもらいたいところだったが、さて、彼のところにBSを受信するシステムが備わっているかどうか。
ロートレックという画家は子供のころの事故で、下半身の発育がとまった身体障害者だった。
詳しく知りたい人はネット上の百科事典ウィキペディアで 「ロートレック」 の項を参照のこと。
ここに本人の写真も出ている。
身障者として生きなければならなかった彼が選んだ職業が、キャバレー 「ムーラン・ルージュ」 のポスター作りだった。
彼は毎日はなやかな踊り子たちにかこまれて仕事をしていたわけだが (うらやましい)、彼自身が本気で女性たちから愛されることはまずなかったと思われる。
残された彼の肖像写真を見ると、ことさら無表情な顔の奥底に無限の悲しみをただよわせているように思えるのは、こっちの考えすぎか。
生涯誰にも愛してもらえないという残酷な運命にたえて、彼がアル中で死んだのは36歳のときだった。
こんな人生を受け入れるしかなかった彼が、やけっぱちにならないほうが不思議である。
芸術家というのは (たぶん) 愛について常人より敏感な人種であるのだから。
日本の作家に永井荷風というおじさんがいる。
ストリップ小屋に入りびたったりした風変わりなおじさんである。
こちらもまわりを裸の踊り子たちにかこまれてニタニタしていたわけだが、残された写真を見ると、荷風という人もあまり女性にもてるタイプではない。
蓼食う虫も好き好きという言葉があるし、無知な踊り子たちに信頼されていたみたいだから、必ずしも残酷な運命とはいえないかもしれないけど、どこかデカダンスな生活ぶりに、永井荷風とロートレックに共通した屈折した心理を感じてしまう。
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コメント
ロートレックは僕も好きな画家の一人である。ムーランジュールで踊り子のポスターをリトグラフで製作し、その情景を見事な油絵で表現している。パステル画でバレーの踊り子を表現して有名なドガと対比すると両極を見るようで面白いが、しかしドガもロートレックも、けして幸せな人生だったとはいいがたい共通点があるのは面白い。
画家はその置かれた人生によって表現が決定付けられるようだ。豊かな現代社会に暮らす僕たちにはとてもロートレックやドガのような絵は描けそうにもない。
僕なんか阿蘇の野の花を描いて絵葉書にして売ってやろうなんて魂胆で絵を描いているようではとてもロートレックには及ばないだろう。
まあ、しかし出来るところからやっていって、僕なりの表現を見つけよう。
阿蘇でもBSは映りますよ。
投稿: いなかもん | 2007年6月28日 (木) 23時38分