ベルイマン記
スウェーデンという国のいき方はわが国にも参考にならないだろうか。
経済大国だって肩ひじはって生きるより、身分相応に、じみで堅実な生き方を模索するといういき方である。
スカンジナヴィア半島の国々をみていると、ときどきそんなふうに思ってしまう。
じみで堅実なといってもスウェーデンはあなどれない。
福祉の先進国であることはよく知られているし、ボルボやサーブという名車は本来この国のものである。
また映画産業でもすぐれた傑作をつぎつぎと生み出しているのである。
そんなスウェーデンの誇る映画監督のイングマール・ベルイマン氏が亡くなった。
この人の映画はとにかく難解なことで知られる。
わたしも 「第七の封印」 や 「野いちご」 「処女の泉」 などのDVDを持っているんだけど、わかったような顔をしてすばらしいとほめたたえるにはためらいがある。
彼の映画は詩のようなものといったらいいかもしれない。
個々の場面は理解できなくとも、観終わったあと確実なイメージやメッセージが伝わるのである。
それを言葉でいうのはむずかしい。
しかしわたしのような凡人にも、見終わったあとの清涼感のようなものは理解できる。
「第七の封印」 は、全編が重くいんうつな雰囲気におおわれているけど、登場人物のほとんどが死神にひかれて舞台を去ったあと、馬車で出発する道化師夫妻に、雲の切れ間からようやく晴れ間がのぞいたような気分にさせられる。
「野いちご」 では、主人公の科学者を演じた老俳優がすばらしい名演である。
60、70まで生きた人なら誰でも、過去に幸福だった思い出を、ひとつやふたつはかならず持っているだろう。
映画の最後で、微笑みながら眠りにつく老人の顔が、わたしのような人間にも過去の幸せな思い出をよびさましてくれるのである。
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