姪っ子
わたしの姪っ子のひとりは極道モンで、不倫をしたり駆け落ちをしたり、男とケンカをして鼻っばしらをへし折られたりと、なかなかの武勇伝の持ち主である。
アノネと、わたしもいちおう人生の先輩として注意をしたことがあるのだが、これが世代の断絶というのだろうか。おじさんの忠告なんてハナもひっかけてもらえなかった。
そんな極道姪っ子でもけっこういいところもあるようで、実家には彼女が祖母のために買った車椅子なんてものがある。
先ゆきみじかい祖母だけは大事にしようという殊勝な気があるらしい。
お盆に帰省して、姉ちゃんはどうしたいと、もうひとりの姪っ子に訊いてみた。
オーストラリアに短期留学しているよ、という返事である。
いっしゅん耳を疑ったが、半年ばかり勉強してくるよと妹に言い残して、今年の5月にふらりと日本を発ったらしい。
父親は貧乏人だし、娘とぜんぜん話のあわない化石人間だから、留学の費用はすべて自分でこつこつ貯めたもののようだ。
おそまきながら少しは向上心をもったのか、それともわが家に伝統の放浪癖が頭をもたげたのか。
なんだっていいやと、わたしのほうもだいぶいいかげん。
結婚して子供を産んで幸せな家庭を、なんていうまっとうな生活を望まないDNAが、わが家のどこかに受け継がれているらしい。
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