チベット
わたしの知り合いの知り合いに、中国とチベットの関係について話すと昂ぶっちゃう女性がいる。
中国はチベットを武力で制圧し、資源を搾取しようとしている、というのが彼女の持論である。
この問題についてわたしはあまり関わらない主義だけど、先日、彼女の血圧をさらに上げかねない番組がNHKで放映された。
「激流中国/チベット編」 である。
2006年にチベットと中国をむすぶ鉄道が開通したせいで、チベットに押し寄せる観光客がいっきに増えた。
お金持ちの日本人や、チベットを小説中のシャングリラ (理想郷) と信じる欧米人である。
番組にはラサで近代的なホテルを経営する中国人オーナーが登場する。
このホテルの立派なことといったら、北京や上海のホテルにもひけをとらない豪華けんらんたるもので、列車で到着する観光客がひきもきらない。
中国人が経営するホテルが他人の土地で商売するなんてと、知り合いの女性なら、これだけでも怒髪天をついちゃうだろう。
しかし話はそんなに簡単じゃあない。
ホテルが、なんの地場産業もなかったチベットに、近代的な雇用を創出したことは事実だし、貧しいチベット人にとって年収に匹敵するような給料を払っていることもまた事実だからである。
問題はこの、見た感じ、いかにもこすっからそうなオーナーが、チベットの片田舎をまわって、寺院や農家から骨董品を買いあさっていることである。
ほんの数千円で購入した仏像や古い家具が、ホテルで売るときには数万、数十万になってしまうので、テレビを観ている日本人には、これこそ搾取の典型のように思えてしまう。
宗教心のつよいお坊さんの中には、仏像を売るなんてとんでもないと拒絶する場合もあったけど、テレビで見ているかぎり、どこまで本気なのかあやぶまれる雰囲気だった。
残念ながらこういうことも、時間や空間を超えて世界中で繰り返されてきた歴史的事実である。
ホテルのオーナーが従業員のまえで訓示する 「外から来た者 (中国人) のほうが、早く先進国の経済体制を受け入れたから、ビジネスに関する考え方が進んでいる」 という言葉は、資本主義の冷徹な真理であって、同情や嫌悪感だけで反対するのは客観的な見方とはいえない。
だいたい先進国の観光客たちは、すぐに文化がすたれるとか自然が破壊されるとか騒ぐけど、チベット人だって、いつまでも谷底まで水を汲みにいったり、ウシのフンを集めて燃料にしたがっているわけじゃないだろう。
彼らにも快適な生活をいとなむ権利があるのである。
わたしが願うのは、チベット人たちが早くグローバル化に順応して、みずからの手で世界の仲間入りをしてほしいということである。
そして同時に、グローバル化の悪しき側面にも気がついてほしいということである。
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コメント
あーた「資本主義の冷徹な真理」って言った人は共産主義の国の人ざんしょっ!何て具合に知り合いの知り合いは怒るかもしれないですよ。
マー家に呼んでもいないお客さんが勝手に家に入ってきて居座って、そこでご商売してる訳だから・・・チベットの方が商売するなら判るけど、なんちゃって。
投稿: 知り合い | 2007年10月10日 (水) 23時10分