台湾紀行
土曜日の朝日新聞の夕刊に、司馬遼太郎の 「街道をゆく」 の番記者だった人が、この連載についての思い出を書いていることは、以前このブログでもふれたけど、今週のそれは巻40 「台湾紀行」 について。
「台湾紀行」 は、「街道をゆく」全シリーズの中で、わたしのもっとも好きな巻のひとつである。
ここには台湾の歴史や日本との関わりとともに、有名無名のさまざまな日本人、中国人、台湾人が登場する。
古くは明王朝復興のため清に反旗をひるがえした鄭成功 (彼は日本人と中国人の混血で、近松門左衛門の「国姓爺合戦」の主人公である) がおり、近代においては台湾統治のために腐心した児玉源太郎や後藤新平などの政治家がいる。
鄭成功が儒服を焼き捨てて (つまり文官としてではなく)、軍人として生きることを決意するあたりの描写は、胸がすくような思いがするし、統治というとすぐに侵略や搾取を連想する人がいるようだけど、日本の台湾統治がおおむね公明正大なものであったことは、「台湾紀行」 を読んだだけでもわかる。
この巻は現在まで続く台湾と大陸中国の問題にもふれており、戦後の台湾で、侵入してきた国民党軍のために惨殺された詩人のことや、その後の本省人と外省人の確執など、どのような悲惨な事実があったかも、この本できちんと理解することができる。
そして日本統治時代に、台湾の水利工事のために奮闘し、いまでも台湾の人たちから感謝され続けている日本人土木技師が登場する。
彼は大戦中に戦没したが、彼の妻は終戦時に、夫が作った台湾のダムに身を投じて亡くなった。
台湾の人たちはいまでも夫妻の命日にはお参りを欠かさないそうである。
日本の侵略行為や残虐行為ばかりを問題にする人もいるが、戦争のかげにこうした日本人もいたことも知ってほしいと思う。
「街道をゆく」 が、自虐史観で日本批判の急先鋒である、朝日新聞社の週刊誌に連載されていたのも、歴史の皮肉といえるかも。
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