紫式部
ずっと以前のことだけど、日生劇場へ観劇に行ったことがある。
「紫式部ものがたり」 というミュージカル!である。
ミュージカルというと、レオタードの姉ちゃんが飛んだりはねたりというのが相場だけど、紫式部といえば十二単 (ひとえ) ではないか。
こんなんで飛んだりはねたりできるのか。
そのあたりがなんとなく不安で、不安なまま席についた。
ストーリーは源氏物語を執筆中の紫式部の苦労話で、登場してくるのは紫式部とその父親のほか、清少納言、和泉式部、赤染右衛門 (女である) という百人一首の著名人から、陰陽師という最近話題の小説中の人物など。
和泉式部なんかちぢれたロングヘアで登場した。
じっさいの和泉式部も奔放でとんでいる女性だったから、現代的に誇張するとこうなるらしい。
それはいいけど、こういう人物たちがみんないっぺんに揃っちゃって、時代考証はまちがってないのだろうか。
いろいろ調べてみたら、彼女らが一堂に会しても決して不思議ではないということがわかった。
彼女らの生没年はたいてい不明だが、いずれも平安時代の一条天皇の御世に活躍し、天皇の后や中宮 (定子や彰子) に仕えている。
ということは年齢もそんなに違わなかっただろう。
一説によると、この中では赤染衛門がいちばん年長で、つぎが清少納言。
紫式部と和泉式部はほぼ同じくらいの歳だったようだ。
彼女らがじっさいに会ったことがあるかどうかは別問題だけど、紫式部が清少納言を意識していたことは間違いない事実のようであるし、清少納言と和泉式部と赤染衛門とは交流もあったらしい。
こうなると彼女らをずうっと後世の (無責任な) 軽喜劇の中で対面させても、時代考証がおかしいとはあながちいえない。
また安部晴明という陰陽師についても、わたしは夢枕獏の小説に登場する架空の人物とばかり思っていたのだが、実存した人物であるという (紫式部よりずっと年上になる)。
彼女らのことを調べていたら、女性が自由恋愛をして文章を書きまくっただけではなく、気にいらない夫と離婚したり、新しい奥さんができて古い奥さんが家出をしたり、子供の認知をめぐって裁判したりと、平安時代というのは女性にとって、じつに自由はつらつとした時代であることがわかった。
まあ、調べてみるものである。
この劇からほかになにか得た知識があるとすれば、十二単のしくみである。
絵巻物などで見ているだけではどんな構造の衣装なのかわかりにくいが、この劇を観ていて、十二単というのは神社の巫女さんの衣装の上に、派手な上っぱりを何枚もひっかけたものであることがわかった。
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