« カモメ | トップページ | ベトナム戦争 »

2008年1月28日 (月)

朝鮮戦争

朝日新聞がときどき 「東アジアの150年」 というシリーズを載せていることは、このブログでも何回か触れている。
28日のそれは朝鮮戦争についてだったけど、また朝日新聞流の偏見が感じられるので、ひとこと言いたくなってしまった。

戦争はもちろん悲惨なものである。
そのひとつの例として、この記事の中では、ソウル郊外の高陽市にある、戦争中の虐殺現場のことが取り上げられている。
朝鮮戦争が一進一退の展開をしていたとき、韓国軍がここで 「敵に協力した」 という名目で153人の農民らを殺したのだという。
このあとにも 《冷戦下のイデオロギー対立を背景に多くの惨劇を招いた》 という文章があり、米軍による虐殺事件も起きたとある。
さらに、朝鮮戦争前後の民間人虐殺の犠牲者は100万人に及ぶとみられる ~ 軍人出身の大統領のもとでは遺族は沈黙を強いられたと、文章は続く。

これらは真実だろうから文句を言うことはないけど、この新聞記事は、同じように、あるいは韓国軍以上に凄惨な虐殺をおこなった北朝鮮についてはひと言も触れていない。
この記事を読むと、悪いのは韓国と米軍であって、北朝鮮ではないと信じる人がいても不思議ではない。

当初、38度線を越えてソウルに達した北朝鮮軍は、政治家や公務員に対して自首をすすめ、名乗り出た人々をことごとく虐殺した。
軍人が戦争で殺されたのならまだしも、この虐殺の被害者のほとんどは民間人だった。
虐殺に関しては北朝鮮も同罪か、あるいはそれ以上のことをしているのである。

朝日新聞は朝鮮戦争においては第三者の立場である日本の新聞である。
客観的に歴史を書こうというならば、韓国軍の残虐さばかりではなく、北朝鮮の残虐さにも触れるべきではないか。
韓国も北朝鮮も相手への侵攻を考えていたとあるけど、考えるだけなら台湾の蒋介石もずっとそんなことばかり考えていた。
それを実行に移したのは北朝鮮である。
また、朝鮮戦争のことを書くのに、なぜ日本が大陸侵略のために作ったと、鴨緑江の橋のことに数行をついやす必要があったのか。

同じ紙面に北朝鮮の金日成と、韓国の初代大統領だった李承晩の経歴が載っている。
わたしはどちらも好きじゃないけど、朝日の書き方はおかしいと思わないわけにいかない。
李承晩は独裁政治をおこない、政権腐敗のために倒れたと書いてあるのに比べ、独裁政治に関しては李承晩をはるかに凌駕していた金日成のほうは、独自の思想をかかげて独裁体制をかためたと、わりあいあっさり書いてある。
これでは歴史に不勉強な昨今の若者が読んだら、李承晩は悪人だが、金日成は立派な指導者であったと考えてしまうだろう。
李承晩には、すくなくとも韓国の発展に寄与した部分があることは否定できないし、彼の失脚は国内の民主運動の成果だったのだから、彼が育てた民主化が彼を倒したといえる。
金日成は民主化の芽をことごとく摘み、反対派をかたっぱしから粛清し、朝鮮人民にとって現代まで続く悪夢のような社会を構築した。
ほんとうに非難されるべきはどちらだったのか。
       
何度読み返しても朝日新聞の書き方はおかしい。
わたしのような凡人でさえ、おかしいと感ずるような記事を載せる朝日新聞の意図はどこにあるのだろう。

| |

« カモメ | トップページ | ベトナム戦争 »

(朝日)新聞より」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 朝鮮戦争:

« カモメ | トップページ | ベトナム戦争 »