世界残酷物語
「世界残酷物語」 という映画があった。
1962年の映画だから、もう46年前の映画である。
世界中の奇習や残酷なシーンを集めたドキュメンタリー映画だけど、いま見かえすと、やらせやでっち上げが満載で、ほとんどの映像が真実とはいえないようである。
最近ではテレビもしょっちゅうこういうドキュメンタリーを放映しているし、情報は氾濫して世界はますますせまくなっているから、視聴者もなかなか簡単にはダマされない。
しかしこの映画の公開当時は、まだ自由な海外旅行もゆるされていないころで、この映画の内容をすなおに信じた日本人は多かった。
46年前という点を考慮し、マユにつばをつけて見る気があれば、この映画は文明への強烈な批判をこめた、それなりの傑作という評価ができなくもないのだけど、しかし、まあ、ふつうに考えれば、その後製作されたおびただしい映画に埋もれてしまうのが関の山のゲテモノ映画だっただろう。
しかしどこを血迷ったのか、このゲテモノ映画の主題歌が、なんとこの年のアカデミー歌曲賞にノミネートされてしまった。
ひじょうに美しい旋律をもったその主題歌 「モア」 は、その後歌詞がつけられて、スタンダードなポピュラーの名曲になってしまったので、今でも時々耳にすることがある。
耳にするたびにこの映画を思い出すので、わたしにとって、主題歌のおかげで 「世界残酷物語」 は永遠不滅の映画になってしまった。
最近では映画製作者の意図とはべつの意味で、この映画はわたしに複雑な悲しみを感じさせる。
何万羽もの海鳥が群れる南海の孤島、放射能に犯されて方向感覚を失った (とされる) ウミガメ、飛行機を自分たちの神さまだと信じるパプアニューギニアの原住民たち、そしてやらせの数々をすなおに信じていた観衆たちも含めて、わたしがはじめてこの映画を観たときから、いったいどれだけの年月が過ぎただろうということである。
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コメント
ヤラセ・・・?
世界残酷物語では10人ぐらいの女性が1人の男性を追いかけていき、藪の中に連れ込まれ男性がフラフラになって出てくる。もちろん、女性はニコニコと楽しそうにしていた。
わたしも若かったので、どこの国だ!こんな男性にとって羨ましいことをやっているのは・・・オレもあんな国にいきて~ と思ったものです。ヤラセ・・・
投稿: 森のおじさん | 2008年1月26日 (土) 17時38分