佐伯港の思い出
熊本のKさんがブログに釣りの記事を書いている。
彼が今回釣りに出かけた大分県佐伯市という地名を聞いて、なつかしい思い出がよみがえってきた。
わたしは昔、海上自衛隊の艦船に乗り組んでいたことがあるんだけど、佐伯市は自衛隊の指定寄港地であるので、艦(ふね)があちら方面に出かけたときは、ほとんどこの港に寄港した。
ここで新兵だったわたしはとんでもない失敗をしたことがある。
佐伯港には自衛艦がちょくせつ横づけできる桟橋がない。
それでいつも沖合いに錨泊して、陸上との連絡には内火艇という小型のエンジン船を使った。
写真はネットで見つけたもので、内火艇の乗員は艇長、機関員、船首員の3人である。
これで上陸する隊員の送迎や荷物の受け渡しなどをする。
新兵のわたしはバウメンという、内火艇の船首に立って見張りや係留をする役をやらされた。
最初はコワイが、なれるとカッコいいし、なかなか爽快な役目である。
佐伯港に錨泊していたある日、上陸していた艦の幹部 (艦長や副長など) の迎えにいけという命令が下った。
ただし艦から桟橋まで片道30分以上かかるので、もし予定の時間に幹部がもどってこなければ、つぎの便の時間まで桟橋でそのまま待機せよとのことである。
桟橋に着いてみると誰も帰ってきていなかった。
たまたまこのときの内火艇の艇長は呑ン兵衛で有名な人で、つぎの便まで時間があるから、それまで近くの飲み屋でイッパイやっていようと言い出した。
ここで他の2名の乗員が必死で止めるべきだったのだが、まあ、わたしも機関員もキライじゃなかったもんだから・・・・・・・
いい機嫌で桟橋にもどったら内火艇がなかった。
いっぺんで酔いがさめた。
桟橋といっても自衛隊専用の桟橋だから一般人は入ってこれないはずだが、誰かが乗り逃げしたのだろうか。
やがて沖から内火艇がもどってきた。
船首に青すじをたてて、怒りで顔をまっ赤にした当直士官が乗っているのが見えた。
つまりわたしたちがイッパイやっているあいだに幹部連が帰ってきて、内火艇の乗員がいないというので、勝手に操縦して艦にもどってしまったのである。
内火艇の乗員3名が、このあと1週間ばかり上陸止めというおしおきをくらったことは言うまでもない。
佐伯港の正面、はるか沖合いに水ノ子島という小さな岩礁があって、その灯台のおぼろな光芒とともに、わたしはよくこの、なつかしくも滑稽なエピソードを思い出す。
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