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2008年1月14日 (月)

グレン・グールド

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NHKBSの音楽番組はじみだけど、ときどき珠玉のような掘り出し物にあたることがある。
たとえば以前放映された 「グレン・グールド/ロシアの旅」 という番組がそうである。

これは1957年に、カナダのピアニスト、グレン・グールドが、当時まだソ連とよばれていたロシアに乗り込み、聴衆のど肝を抜いたてんまつを、1時間ほどの映像にまとめたものである。
当時の (今でもそうかもしれない) ロシアは、クラシックやバレエの分野では、自他共に認める世界一の水準をもった国だった。
これは同時に、この国の聴衆は世界一耳の肥えた聴衆ということになるだろう。
ただ本国のカナダでさえ、文化大使として派遣するのに、グールドで大丈夫かいという声があがるほど、そのころの彼の知名度は低いものだったらしい。
だからモスクワでグールドのコンサートに集まった聴衆のほとんどが、たんなる好奇心と、日ごろロシアでは演奏を許可されていないピアノ曲を聴けるというので集まった人たちだった。

この聴衆が、コンサートの前半が終わって休憩時間になると、みないっせいに電話のところへ走ったそうである。
彼らは親戚知人にむかって異口同音に叫んだ。
「なんでもいいからすぐに飛んでこい」、「すごい演奏だ」、「すばらしいピアニストだ」
おかげでコンサートの後半が始まるころには、会場の周囲は新たに押し寄せた聴衆で身動きもできない混乱だったとか。
グールドもすばらしいが、これほどストレートに反応するロシアの聴衆もすばらしいとはいえないだろうか。
あるロシア人は述懐して、当時のロシアでソ連以外のものに堂々と拍手することが許された稀有の機会であったという。
音楽が政治を超えるものであることを、この映像は如実に物語っている。

この番組を見てわたしもすぐに走った。
いや、電話のところではなく、レコード屋へである。
ただ、わたしもクラシックはよく聴くけど、いろんな演奏を徹底的に比較するほどのマニアではないから、せっかく買ってきたグールドの有名な 「ゴールドベルク変奏曲」 にしても、その良さはさっぱりわからなかった。
それでもこの映像だけは何度もくりかえして観ている。
そこにある痛快感は、最近なかなか味わえないものだからである。

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