カニ
わたしの家の近所は、都内では貴重になっためずらしい生きものがたくさん見られるところである。
近所を流れる野川という川にも、川魚以外にさまざまな動物が棲んでいる。
わたしはここで以前カニを見たことがある。
ザリガニではなく、赤ん坊のこぶしぐらいある本物のカニである。
はさみの部分に手袋のように濃い毛が生えていたから、これはモクズガニの仲間らしかった。
ちなみにわたしがよく出かける中国の上海ガニもこの仲間だ。
へえ、この川にはカニまで棲んでいるのかいと (ザリガニはたくさんいる)、それからは野川のほとりを散歩するたびによく注意していたが、それ以来いちども見つけたことがなかった。
ほんとうにカニが生息しているなら、1匹の親ガニに対して、もっとずっと多くの子ガニが見つからなければならないはずだ。
それがひとつも見つからないということは、あのカニは、たまたまどこかで飼われていたカニが、逃げ出したか捨てられたものだろう。
昨日、ワサビ田のあたりを散歩していたら、小さな女の子がなにか獲っていた。
獲っているのはオタマジャクシだそうだ。
ところが容器をのぞいてみたら、獲物の中にカニもいるではないか。
なんでもこの近くの流れで見つけたものだそうである。
こちらはサワガニだったけど、こうなると、やはりわが家の近所にはカニが生息していると断言してもいいかもしれない。
たとい断言するのは早計だとしても、わが家の近所の自然の豊富さが、ますます散歩を楽しいものにしてくれることだけはまちがいがない。
人間は自然の荒廃をなげくけど、それは保護しさえすればまたたく間にもとにもどるものである。
自然のたくましさを実感するとともに、散歩のたびにわたしは、その保護の重要性をますます確信してしまう。
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