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2008年4月26日 (土)

独立闘争

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日本でのオリンピックの聖火リレーがそれほど大きな混乱もなしに終わった。
日本人の大半は、チベットに同情はする、しかしオリンピックは無事に行われてほしいという常識的な認識だと思うし、今回の一連の騒動では、中国にとってもチベットにとっても得るところがあったと思うので、わたしも胸をなでおろしている。
というのは、わたしが何度も中国に出かけており、またこのブログとは別に中国の紀行記を書いたブログを持っているので、わたしが中国の味方ばかりしていると非難する輩がいるからだ。
困ったモン。

わたしは昔読んだ本のことを思い出した。

かってアフリカでビアフラという国が、宗主国のナイジェリアから独立を志したことがある。
しかしこの独立は国際的な支援が期待できるものではなかった。
独立に賛成しない国は多く、彼らの戦いは孤立無援のまま続いて、飢餓と殺戮のあげく、わずか3年でビアフラは世界地図から消えた。

米国の作家カート・ヴォネガットは、内戦で混乱したビアフラに乗り込んで、「裏切られた民衆」 というレポートを書いた。
彼はビアフラを支援する女性活動家に招待されて、包囲され孤立したビアフラに乗り込み、そこが崩壊する直前に飛行機で脱出したのである。
ヴォネガットのレポートからは、ビアフラの民衆に深い同情を示しつつも、全体としてこの独立闘争にやや批判的な見解が読み取れる。

ビアフラについては、彼を招待した女性活動家以外にも、同情して支援する人々は多かった。
ヴォネガットが通俗的な作家であれば、悲憤慷慨して、熱い文章でビアフラ支援記事を書いただろう。
しかし、国際情勢に精通した作家として、またその発言が世論に与える影響の大きな作家として、ヴォネガットはこのレポートを書くのに慎重になったようである。
彼の文章は、ビアフラにとってもナイジェリアに対しても、冷静で客観的なものだった。

独立運動は尊いものだと考えている人は多い。
しかしそれが許されない状況というのは、残念ながら存在するのである。
作家でもないし、影響力もない凡人のわたしだけど、わたしは現時点ではどうしても、ああ、そうですかと、チベットの独立を支援する気にはなれないのだ。

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