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2008年8月 6日 (水)

ソルジェニーツィン

新聞にロシアの文豪ソルジェニーツィンの訃報。
ロシアの作家というと、トルストイやドフトエフスキーのように、読むほうにもそれなりの覚悟がいるようなイメージがあるので、わたしが読んだ彼の作品は 「イワン・デニーソヴィチの1日」 と 「収容所群島」 ぐらいである。

「イワン」 はなかなかおもしろかった。
スターリン時代の強制収容所の体験と聞けば、つい悲惨な小説を連想してしまうけど、この小説はこれ以上ないような過酷な日常を、どこかひょうひょうとした、ユーモアをまじえた筆調でつづっている。
なまじありのままを伝えるよりも、皮肉や諧謔で表現したほうが効果的ということは、映画でも文学の世界でもよくあることだ。
ソルジェニーツィンはそうやってわたしを彼の世界に引き込んだのである。

続いて読んだ 「収容所群島」 は、“読むほうにもそれなりの覚悟がいる本” の系列に属するもので、著者自身が体験したスターリン時代の強制収容所について、文庫本6冊に活字をびっしり並べてようやく収まる大作である。
この文庫本は全部がいっせいに発売されたわけではなく、たしか2巻づつ時をおいて発売された。
詳しい事情はよく知らないが、最初のほうはロシア時代から書き始められ、あとのほうは西側に追放されてから、西側マスコミに庇護された状態で書かれたような気配が (ほんの少しだけ) 感じられ、ということは、当時のソヴィエト攻撃の急先鋒としての役割を担わされているとかんぐられる部分もあって、たんなる文学愛好者であり、思想的にはノンポリであるわたしにとって、調子が強すぎてけんのんという部分もあった。
いずれにしても読んだのはそうとう昔であるし、SFでもミステリーでもないから、おもしろおかしいストーリーがあるわけでもなく、いま本の内容を説明しろといわれてもほとんど忘れてしまっている。
「収容所群島」 が文庫本として発売されたのは、もう30年も前のことなのである。

上記の2冊以外に、彼の本を読もうという意欲は飛んで消え失せたが、ソルジェニーツィンのその後について共感できる部分は多い。
あれほど全体主義を攻撃した彼が、その後は自由主義圏、わけてもその旗頭である米国の経済万能主義に疑問を呈していること、強圧的とはいえ新生ロシアのプーチン大統領を擁護する発言をしていることなどだ。
わたしも現在のアメリカの行き方はけしからんと思うし、プーチンはなかなかいい男だと思っているのである。

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