ジンベエザメ
むかしは世界中の小説を読みふけったけど、最近は小説よりも紀行記や歴史、科学などのドキュメンタリーばかり読んでいる。
理由はもちろん、最近の小説がおもしろくないから。
映画もそうだけど、“最近”とつくものにロクなものがない。
これはまあ、こっちの年齢にも原因がありそうだけど。
つまり世代のズレってやつかもしれないけど。
そういうわけでわたしの部屋には上記のタイプの本がいっぱいだ。
近いうちに沖縄へ泳ぎに行こうと考えているもんで、その中から、ヘイエルダールの 「コン・ティキ号探検記」 を読み返してみた。
これは1947年にノルウェーの探検家トール・ヘイエルダールが、ポリネシア人の祖先は南米から筏で海をわたったインカの子孫ではないかという自らの仮説を証明するために、パルサ材で組んだ筏で太平洋をおし渡ったその探検記である。
彼らは航海中に、当時はまだあまり知られていなかった世界最大の魚であるジンベエザメと遭遇したりする。
そのジンベエザメが、いまや沖縄の水族館ではガラスごしにながめられることになった。
ま近に世界最大の魚を見ることは、博物学好きのわたしにはこたえられない楽しみだ。
ところでヘイエルダールのあら探しをするわけではないが、なにぶんにも60年も前に書かれた探検記なので、内容にはいくつか疑問な点もある。
まず、探検の最大のテーマであった、ポリネシア人の祖先は南米のインカ人というのが現在では怪しいとされている。
ポリネシア人の祖先は、どちらかというと東南アジアあたりから来たというのが最近の学説だ。
そんな大きな問題より、野次馬的あら探しでは、たとえば筏で航海中に彼らは恐ろしい大イカに襲われる心配なんかしているけど、たとえどんなに大きなイカでも、船の上の人間を襲うことは考えられない。
古典的SF映画 「海底2万マイル」 では、潜水艦ノーチラス号と大イカの死闘がハイライトになっていたけど、そもそもイカというのは、水の外では足一本持ち上げることができないかよわい動物のはずである。
サンゴ礁の近くには人間を襲う大ウナギがいるという記述もあるが、これはどうやらウミヘビのことらしい。
しかしウミヘビもこころやさしい生きものであって、(食うために) 人間を襲うことはまず考えられない。
かってダイビングに凝ったことのあるわたしは、そのくらいのことは知っているのである。
そんなあら探しはともかくとして、「コン・ティキ号探検記」 は今でもわたしの愛読書のひとつである。
自分を1940年代に置いてみれば、この航海は命知らずの冒険であると同時に、どれだけ新奇な驚きと新しい発見に満ちた探検だったことか。
わたしはつくづく探検に加わった人たちをうらやましいと思ってしまうのである。
| 固定リンク | 0



コメント