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2008年10月30日 (木)

測量船

自然の豊富なわが家の周辺もだいぶさま変わりしてきた。
木の葉のおちる季節になると、あれほどにぎやかだった動物、植物ともがたっと寂しくなる。
花もほとんど見られないし、スッポンもナマズも小さな魚たちもみんなどこかへ消えてしまった。
つられてこちらの気持ちまでしずんでしまう始末。
街がいくらクリスマスや師走の電飾で飾りたてられようと、こちとらもともと街へ出るのが好きなほうじゃないから、みんなむなしく感じられるばかりである。

三好達治という詩人がいる。
この人の最初の詩集 「測量船」 は、まず詩集のタイトルがいい。
測量船というと、広々とした大海原のおなじところを、いつまでもいったりきたりしている小さな船の影が目にうかぶ。
孤独や彷徨というものをこれだけ的確に表現した物体、そしてタイトルはめったにない。
この人の詩集は 「測量船」 だけがダントツですばらしく、それ以降の詩集は急速に輝きを失ってしまった。
三好達治は最初の詩集で燃え尽きたような人だ。

 春の岬 旅のをはりの鴎どり 浮きつつ遠くなりにけるかも
わたしは人と積極的にまじわりたいとは思わないけど、旅に出たいという気持ちだけはつねに持っている。
この詩はひとり旅でなければ絶対に感じない旅情をうたっている。
わたしの大事な宝石のような詩である。

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