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2009年1月 4日 (日)

アラビアのロレンス

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知り合いと2人で、リバイバル上映されている 「アラビアのロレンス」 を観てきた。
すでにテレビでも何度も放映されているし、DVDも持っているくらいだから、うんざりするくらい観た映画だけど、劇場の大画面で観るのはひさしぶりだ。
ちなみにこの映画くらい大画面がふさわしい映画はあまりない。

映画館でまわりをながめたら、やっぱり年配の観客が多かった。
みんな青春時代にわたしと同じ感動を共有した人たちのようである。
わたしがこの映画を最初に観たのは20代のはじめで、ストーリーや背景を勉強してなかったものだから後半は眠くなってしまった。
昨今の “わかりやすい” CG大作をみなれた人には、あらかじめストーリーや背景を勉強しておかないとちょっとつらい映画でもある。

なにはともあれ、今回 「ロレンス」 を観て、まず感じたのは、あれ、画面が思ったより汚いなということ。
これは日ごろDVDを観慣れているからで、映画館では同じ映像を思い切り拡大してしまうせいらしい。
写真でも映画でも拡大すれば画質が粗くなるのはやむをえないことだし、昨今のDVD映画は、テレビで観たとき最適の画質になるよう調整がしてあるからのようだ。

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じつは2度目に観て以降、この映画をつくったD・リーンは人種差別主義者ではないかと長いあいだ考えていた。
彼の作った映画では 「戦場にかける橋」 でもそうだけど、英国人がいちばん素晴らしく、日本人やアラブ人は遅れた人種だみたいなものが感じられたのである。
そういうわけで彼の映画にわずかばかり否定的な感想をもっていたことも事実である。

あらためて 「ロレンス」 を観て、そんなことはないとまた考えを改めた。
この映画では英国の狡猾な二枚舌外交や、多くの部族の寄り集まりで、けっしてまとまらないアラブの現実もきちんと描かれている。
第一次世界大戦のころは、アラブ人の文化の程度もこれが現実だったのだろう。

映画の後半でロレンスが、男色家のトルコ軍司令官から屈辱的な扱いをうけるシーンがあるけど、映画ではそれが具体的に描かれていないだけに、説明がないと初めてこの映画を観る人にはロレンスの心境の変化がわかりにくい。
しかしまあ、これを具体的に表現するわけにはいくまいから、そのへんはロレンスの伝記でも読んでもらうとして、この映画がけっして (ついこのあいだ観てきた馬鹿映画の「レッドクリフ」みたいな) 単純な英雄賛歌ではないことは明白である。
いったいいつから、映画は人間の感情を表現するものではなくなってしまったのだろう。

映画の内容について仮に不満を述べる人がいたとしても、何がなんでも素晴らしいのが、映画の中に登場する雄大な砂漠の風景である。
灼熱の砂漠を背景に、蜃気楼の中からベドウィンのアリが登場するシーン、複葉機が低空でアラブのテントを爆撃するシーン、落伍した兵士を救出したロレンスが地平線のかなたから帰還するシーン、トルコ軍の占領する港湾都市アカバを騎馬軍団が急襲するシーン、有名な鉄道爆破のシーンなど、忘れられない名場面の数々がわたしを陶然とさせる。

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アラビアの国王がロレンスに向かって、“あなたも砂漠を愛する英国人なのか” という場面があるけど、この点だけはわたしもロレンスの心境がよくわかる人間のひとりだ。
わたしも砂漠が見たいばかりに、中国のシルクロードに4回も出かけた砂漠マニアなのである。

添付した画像は、とっても雄大すぎる砂漠のシーン、かげろうのもえる地平線から族長のアリが登場するシーン、そして都市アカバをウマとラクダで急襲するシーンだ。

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コメント

お邪魔いたします。

レビューを興味深く拝見致しました。

“いったいいつから、映画は人間の感情を表現するものではなくなってしまったのだろう。”

そうですよね。CGによって表層のボリュームを強調できてしまうと、そこに注力してしまって、ハッタリだけで満足してしまうような映画が多いですね。残念!

ボクも今作のレビューを書いておりますので、トラックバックをさせてくださいませ。

投稿: マーク・レスター | 2009年5月31日 (日) 13時25分

はいはいはい。
ワタシ、ひじょうに辛口の映画批評をやりますからね。
昨今のアホ映画に怒り沸騰中。
ほかにもこのブログの中で映画をブッた切りにしてますんで、よろしかったら読んで。

投稿: 酔いどれ李白 | 2009年6月 1日 (月) 05時58分

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