坊津の宿
朝日新聞は司馬遼太郎の 「街道をゆく」 を骨までしゃぶるつもりなのか、本屋で同じタイトルの文庫本を見つけた。
作家はとっくに死んでいるから、新しい 「街道をゆく」 が出るはずがないんだけど、これは作家があっちこっちに寄稿した文章の中から、紀行記らしき雑文をかき集めて、「街道をゆく・夜話」 という似たようなタイトルをつけたものだった。
「街道をゆく」 に心酔しているわたしとしては、そういう本でも買わないわけにいかないのである。
寄せ集めの文章でもなかなかおもしろいのは、作家の知識と技量、それにわたしの歴史好きによる。
この本にもいろいろ新知識が多いけど、くだらない話題をひとつ。
作家はこの雑文のひとつで薩摩 (鹿児島) の坊津というところに泊まっている。
泊まった宿というのがなかなかユニークで、電気屋さんが宿屋も兼ねているような家だったそうだ。
『風呂場へ降りるときはせまい急な階段を降りるのだが、和船の胴の間へ降りていくような気がする』 というのがこの文章の中の記述。
風呂は五右衛門風呂だったともある。
それでもサービスはわるくなく、近所の女性がわざわざ民謡を踊ってみせてくれたそうだ。
旅好きのわたしとしては、こんな文章を読むとむずむずである。
機会があったらわたしも坊津のその宿屋に泊まってみるかと、名前を頼りにネットで調べてみた。
わたしはこんなふうに、たまたま何かのきっかけで目についたホテルや宿屋のその後を訪ねてみることがある。
以前、新潟の自在館という宿に出かけたのも、たまたま目についたネット上の古い写真がきっかけだった。
残念ながら電気屋さんはその後大改築されて、3階建て、鉄筋コンクリートのありふれた (どっちかというとエコノミークラスの) ホテルに変わってしまったようだ。
作家が泊まったのは1974年のことらしいから、ごもっともな話である。
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