ホームレス歌人
朝早くおきて朝刊を読んでいたら、新聞に 「ホームレス歌人さん連絡求む」 という記事が載っていた。
金融危機が悪化した昨年末から、新聞の読者投稿歌壇にほぼ毎週入選している無名の歌人がいて、その人に名乗り出てほしいという記事である。
この歌人さんは目下ホームレスらしく、いつも投稿人の住所にそう記して投稿してくるのだという。
おそらく金銭欲などもたない無口な文学青年、もしくはそのなれの果ての人なのだろう。
朝日新聞では月曜日の朝刊に投稿歌壇があるのだけど、今朝のその欄でもこのホームレス氏の歌が入選していた。
哀しきは寿町と言う地名長者町さえ隣りにはあり
ちょっと石川啄木を思わせる歌だけど、きびしい時勢に押し流されているホームレスの悲哀がそくそくと伝わってくる歌である。
ひとつだけではたまたま偶然にできた秀歌ではないかと疑う人もいるだろうから、新聞に載っていたこの人の他の作品も引用してみると
鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ捨てたのか
パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる
美しき星座の下眠りゆくグレコの唄を聴くは幻
※グレコはシャンソン歌手ジュリエット・グレコのことだろう。
無能力者のわたしには、自分はなんとかホームレスにならずにすんでいるということで、しみじみともうしわけないという気持ちにさせられる歌である。
世間には歌ごころよりも財務能力にたけた人のなんと多いことか。
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