漱石と是公
ちょっと前にこのブログで、ネット上の 「青空文庫」 についてふれたけど、目下それにハマっちゃっている。
ここにはすでに著作権の切れたものを中心に、小説やエッセイなどがおびただしく掲載されていて、パソコンとネット環境さえあればそれらをただで読むことができるのである。
全部読んでいたらきりがないので、とりあえずパソコン内に専用のフォルダをつくって、わたしの関心のある紀行記、旅行記の類を (ダウンロードして) そこへ集めることにした。
ここで夏目漱石の 「満韓ところどころ」 を発見したのはうれしかった。
これは満鉄総裁だった中村是公の招きで、漱石が満州、韓国を旅したときの見聞録である。
わたしは漱石に凝ったことがあるので、この文章の存在は知っていたが、それほど長い文章ではないので、本屋で買おうとすると、けっきょく他の文章と抱き合わせになった全集のようなものしかない。
漱石の他の文章はほとんど読んでいるわたしには購買意欲がわかないものだったのである。
というわけで、これまで読んだことがなかったのだが、はからずも 「青空文庫」 でただで読めることになったわけだ。
小説家の夏目漱石と役人の中村是公の取り合わせを不思議に思う人がいるかもしれない。
漱石が権力ぎらいだったことはよく知られているし、(漱石にいわせると) 是公は小説などぜんぜん読まない男だったそうだ。
ただ、知る人ぞ知る。漱石と是公は学生時代に同じ下宿の釜のメシを食った仲だったのである。
このへんの事情は 「永日小品」 というエッセイに描かれている。
だから 「満韓」 の中で彼は旧友のことを、終始是公と呼び捨てにしている。
とちゅうでまわりの人間がみんな総裁と呼ぶのに気がついて恐縮するのだが、そのあたりもふくめて、この文章には漱石らしいひょうひょうとしたユーモアがあふれている。
まだ全部読んでないが楽しみである。
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