雪の思い出
天気予報が大雪だなんていっていたけど、わが家の近所では小雪ていどの積雪もなかった。
それでもこんな夜は部屋でおとなしくしていて、思い出でもかじっているにかぎる。
雪というとわたしが思い出すのは、むかしオホーツクをひとり旅しているときに見た光景である。
今から25年以上前のことだ。
当時はまだ北海道に深名線なんていう鉄道があった (現在では廃線になっている)。
そのとちゅうにある朱鞠内という土地は、そこで日本の最低気温を記録したということで知られている。
わたしがその最果てのような駅に降り立ったのは2月8日、つまり最低気温が体験できるかもしれない時期だった。
残念ながら最低気温というやつはそうそうしょっちゅう記録されるものではないし、たった 1日滞在しただけで移動してしまったから、おぼえているのは、子供たちがみんなキルティングのジャンパーを着ているのでずいぶん華やかな印象だったことと、そのあたりに積もっている雪の中に、六角形の結晶が肉眼ではっきり見えるほど大きいということだった。
北海道の観光業者さんに進言するけど、あの雪の結晶をなんとか融けないように固定する方法を確立すれば、沖縄の星の砂に匹敵するめずらしい土産物になることは疑いない。
ムリか。
その後オホーツク沿岸に移動して、紋別というところへ1泊した。
夜になって街をぶらついてみたら、駅前広場でひとりの男性が黙々と氷の彫刻を彫っていた。
雪がすこし舞っており、街灯に照らされた氷の彫刻はとても美しかった。
さらに海岸にそって浜頓別という街に移動し、ここでは飛び込みで 「北オホーツク荘」 という国民宿舎に泊まった。
夜中にトイレに起きて、帰りに廊下の窓から見下ろすと、駐車場のすみの街灯に照らされて、雪がしんしんと降っているのが見えた。
なんてことのない光景だけど、今でもはっきりおぼえているなつかしい雪の思い出である。
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