野坂昭如
最近とんと噂を聞かない作家の野坂昭如さん。
いったいどうしているのかと思っていたら、今朝の朝刊に消息が載っていた。
脳梗塞で倒れたあと、奥さんの献身的な看護のもと、自宅でリハビリ中だそうだ。
野坂昭如は、このごろの若者がどれだけ名前を知っているかわからないけど、団塊の世代にとって忘れられない作家のひとりだ。
わたしは川端康成も谷崎潤一郎も三島由紀夫も読んでいるけど、つい不覚のなみだを落とした小説というのはあまり多くない。
たとえば、例を挙げると、彼の作品のうちでは 「火垂るの墓」 と同じ焼け跡文学の範疇にはいるものに 「焼土層」 という作品がある。
わたしはもちろん焼け跡派ではないけど (もっとずっと若いのだ)、子どものころ赤貧のような家庭に育ち、母親の苦労をま近に見て育ったため、この作品には身につまされるものを感じた。
野坂昭如の小説を純文学といったら語弊があるかもしれないが、そういうこむずかしい小説と比較すると、ストレートに感情に訴えてくるところは、クラシックとロックの関係に似ている。
わたしはクラシックにもロックにも同等の愛情を感じる人間だし、多感な青春時代に、こころの中に小さな哀しみを刻み込んだ作家をけっして忘れないのである。
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