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2009年5月 7日 (木)

トレチャコフ美術館

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ロシアのサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館は、パリのルーブルに匹敵するほどよく知られているけど、モスクワにあるトレチャコフ美術館はそれほどじゃない。
じつはわたしもこんな美術館があるなんて知らなかった、1993年の春までは。

この年の4月、上野の森美術館で 「ニューヨーク近代美術館展」 をやっていたので、ひとりでぶらぶらと出かけてみた。
ニューヨークとつくと嬉しがっちゃう人が多いとみえて、美術館はえらい混雑だった。
わたしはわがままだから行列に並ぶのが大キライである。
ふと見ると、やはり上野公園にある東京都美術館で 「トレチャコフ美術館展」 というのをやっていた。
こっちでガマンしておくかと考えたのがとんだ僥倖だった。
なんでもこの年、トレチャコフ美術館は大改修工事をやっていて、本家で公開できずにいた主要な収蔵品が、ごっそり日本に引っ越してきていたのだそうだ。
わたしがたまたま入った展覧会は、日ごろあまり知られていないロシアの画家たちの絵を、まとめて体験できる貴重なものだったのである。

いや、素晴らしかった。
トレチャコフ美術館の収蔵絵画には、風景や人々の生活を写実的に描いたものが多かったので、ずっとロシアにあこがれていたわたしにとって、絵を観ることがそのままロシア国内のバーチャル旅行みたいなものだったのである。

わたしのロシア熱はいよいよ昂じてしまい、そのあとしばらくは、なんとかもういちどこれらの絵を観たいと、本気でロシア旅行を考えたものだった。
ところがパック旅行でもロシアが対象となると、値段がえらく高いのである。
あこがれはあこがれのまま終わるかとあきらめかけていたら、このたび、ふたたびトレチャコフ美術館の絵が日本にやってきた。

というわけでこの連休は渋谷の Bunkamura ミュージアムまで出かけてきた。
そこで昔の恋人みたいな、クラムスコイの 「忘れえぬ人」 なんかに再会してきたのだが、残念ながらちと失望。
前回のトレチャコフ美術館展に比べると、今回はスケールが小さすぎた。
Bunkamura ミュージアムは民営の美術館だし、前回みたいに主要な収蔵品がごっそりというわけにはいかなかったのだろうけど、展示されていた絵の中で感心したものは多くなかった。
わたしはこの美術館にある素晴らしい水彩画も観たかったのだけど、それもひとつもなかった。
もういちどトレチャコフ美術館の神髄にふれたいと思ったら、やっぱりロシアまで出かけなくちゃダメみたいである。
宝クジでも買ってみるか。

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