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2009年7月 2日 (木)

ネダ

人間の死ぬ瞬間を見たかったらYouTubeで、ネダ (Neda) という言葉を検索してみればよい。
ネダというのは、総選挙後のイランの混乱の中で、銃で撃たれて死んだ若い娘の名前である。
その死の瞬間の映像は、インターネットを通じてまたたく間に世界中に広まり、マスコミの大きな話題になったので、わたしも観てみた。
それ以来、ここ数日というものわたしはずっと彼女のことを考えていた。

あおむけに倒れたあと、彼女は救援にかけつけた人々の肩越しにじっとカメラのほうを見つめる (すくなくとも YouTube で見るかぎりそう見える)。
このすぐあとで彼女は大量の血をはいて死ぬのだが、カメラのほうを見たときにはまだ意識を失っていなかったと思われる。
しかしもがいたり苦しんだりしているようすはないから、あまり苦痛は感じていなかったようだ。
自分を撮影しているカメラを見て、彼女はいったいどんなことを思っただろう。
うすれていく意識の中で、そのとき人間はどんなことを考えるのだろう。

ネダは死んだことで、殉教者としてイラン改革派のシンボルになったが、わたしにはそんなことはどうでもいいことだ。
どんな宗教の、どんな神さまのご宣託を並べようと、権力闘争の本質はエゴと欲望の衝突にすぎない。
ネダの死はおだやかで苦痛のないものに見え、イデオロギーを超越した崇高ささえ感じられてしまうのである。

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