馬
昨日は宮沢賢治の命日だったそうだ。
わたしは賢治の熱烈なファンだけど、命日まではおぼえていなかった。
ここはやはり何かひとつ、彼についてふれておかなくちゃいけないだろう。
しかし彼について語る書物、語る人々は巷にあふれている。
そんな中でわたしの書くべきことが何か残っているだろうか。
うーんと考えたけど、原稿料をもらえるわけでもないブログに頭を使っても仕方がない。
ここは彼の詩の中ではあまり世間に知られていないけど、わたしの好きな詩をどかんと紹介しておくのが、手間もヒマも頭も使わなくていい。
開墾地で働く馬の死と、それを葬る貧しい農民家族のようすを描いた 「馬」 という詩で、平易な表現の中に悲しみがそくそくと伝わる佳作である (とわたしは思う)。
いちにちいっぱいよもぎのなかにはたらいて
馬鈴薯のやうにくさりかけた馬は
あかるくそそぐ夕陽の汁を
食塩の結晶したばさばさの頭に感じながら
はたけのへりの熊笹を
ぼりぼりぼりぼり食ってゐた
それから青い晩が来て
やうやく厩に帰った馬は
高圧線にかかったやうに
にはかにばたばた云ひだした
馬は次の日冷たくなった
みんなは松の林の裏へ
巨きな穴をこしらえて
馬の四つの脚をまげ
そこへそろそろおろしてやった
がっくり垂れた頭の上へ
ぼろぼろ土を落としてやって
みんなもぼろぼろ泣いていた
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