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2009年12月18日 (金)

別テイク

レコードをよく聴く人なら誰でも知っている用語に、本テイク、別テイクという言葉がある。
スタジオでレコードを吹きこむとき、何回か演奏をしてみて、そのうちのいちばんよかったものをレコードに採用する。
最終的に採用されたものが本テイクで、採用されなかったものが別テイクであると、おおざっぱにいうとそんなところらしい。
ジャズの世界では別テイクにも名演奏があったり、資料として貴重なものがあったりするから、けっして別テイクだからいけないということにならないのがムズカシイところだ。

古い話でもうしわけないけど (4、50年まえのジャズ界にブログ・ネタは掃いて捨てるほどあるけど、昨今のジャズ界にそういうものは皆無なので、やむを得ないのである)、オーネット・コールマンに 「フリージャズ」 というレコードがある。
このレコードは集団即興演奏によるものといわれ、管楽器2本にベースとドラムというクァルテットが2つ、合計8人が同時に演奏するという変わったスタイルで、専門用語を使わずに聴きどころを説明するなら、たくさんの楽器によるにぎやかなお祭り的演奏であるとでもいうか。

アナログ時代には、この演奏はぶっつけ本番で、たった1回の演奏がレコードになったと思われていた。
つまり本テイクしかないと思われていた。
ところがCDの時代になって、本テイクとカプリングで、存在しないと思われていたこの演奏の別テイクが日の目をみた。
本テイクのほうはジャズ史に残る問題作で、わたしはアナログの時代に耳にタコができるくらいよく聴いたものだ。
しかしCDに入っていた別テイクはおまけみたいなものだし、演奏も練習のつもりなのか、あまり調子がいいとはいえない・・・・・・・ と思っていた。

そんな別テイクのほうを、ある日たまたまじっくり聴いてみたら、中ほどに、まさに集団即興演奏のだいご味を感じさせる部分があることに気がついた。
ベースのソロが始まるまえの2分間ほどだけど、アンサンブルが終わるのをまちかまえていたように、トランペットがいきおいよく飛び出してきて、それに他の楽器がパカパカピーヒャラとからむ。
この部分に関しては本テイクより別テイクのほうがゼッタイにいい。
たった2分のためにわざわざCDを買ってごらんなさいとは言わないけど、すでにこのCDを持っている人にはお薦めだ。

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