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2009年12月 8日 (火)

灰とダイヤモンド

Hd

もう何度もテレビ放映されている 「灰とダイヤモンド」 がまた放映された。
うちのテレビをデジタル放送にしてから初めての放映なので、いちおう録画してみたけど、なんせ古い映画だからデジタル効果で美しい映像になるかっていうと、それほどでもない。

映画の冒頭は主人公のテロリストが要人を暗殺する場面から始まるんだけど、しちめんどくさい説明はナシ、最近の映画のように善悪がはっきりしておらず、しかも内容は文学的かつ哲学的なので、殺すほうと殺される側の関係がわかりにくい。
相手がドイツなら話は簡単だけど、物語はドイツが敗退したあとのポーランドが舞台である。

そこでちょいと当時のポーランドについて、お勉強してみる。
ドイツが敗北したあと、ポーランドにはソ連軍が乗り込んできて、傀儡というべき親ソ政権をつくった。
おさまらないのは英国に亡命していた西側寄りのグループで、映画は内戦状態にあったこの両者の抗争が背景になっている (んだそうである)。
主人公のテロリストはこの西側寄りグループに属し、親ソ派の要人を目標に暗殺を繰り返すのである。
ナルホド、と安心するほど話は単純じゃない。

この映画をつくったアンジェイ・ワイダ監督を含めて、当時のポーランドには新しい抑圧者であるソ連に反感をもつ者が多かった。
しかし、ソ連に反感を持っていたとしても、映画は親ソ政権下で作らなければならないのである。
親ソ体制を中傷誹謗するような映画、この映画みたいに反体制側の若者をヒーローにするような映画は、もちろん当局の検閲にひっかかって製作できないのである。
そこはそれ、「イワン雷帝」 のエイゼンシュタイン時代から、検閲官をいかにごまかして反体制映画を作るかという点が、ソ連や東欧の映画人のうでの見せどころだった。
ワイダ監督は体制にさからう主人公が、最後は虫けらのように殺される設定にして、なんとか検閲を通過させたようである。
それでも結果をみると、主人公はカッコいいし、カッコいい彼を射殺する当局のほうがワルに見えるから、監督がこめた寓意の勝ちだろう。
このころの検閲官は芸術の本質を理解する素養が欠けていたようだ。

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