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2010年1月 3日 (日)

HAL

Hal9

正月に田舎に帰省してきたけど、わたしは年に数回しか帰らないから、あまり居心地がよくない。
東京の自分の部屋にいるときは、パソコンから本棚、積もったホコリまで含めて、すべてわたし用の環境だけど、実家は兄貴のものであるし、読みたい本もないのでヒマつぶしに困ってしまう。

それで帰省しているあいだに本屋へひとっ走りしてきた。
本屋で見つけた本のひとつは、アーサー・C・クラークの 「失われた宇宙の旅2001」 である。
これは映画 「2001年宇宙の旅」 の原案や、映画には採用されなかった短編を集めたもので、監督のキューブリックにふれた部分もある。
わたしに興味があったのは監督にふれた部分だけで、あとは想像どおりつまらない本だった。

映画は、なんだかよくわからない意味深長な終わり方をしていて、これが哲学的といっていい余韻を残す。
あとは個人が勝手に解釈しなさいという終わり方は、わたしのような空想好きにはわるくない結末だ。
誰かに答えを教えてもらわなければわからないというのは、その人の思考能力の不足である。
ところが偉大な科学者かつ作家であるクラークは、なにがなんでもきちんとした結論を出さなきゃおさまらない人のようだ。
スターゲイトの先で宇宙人に出会うようなお話では、そこまでやったらスピルバーグの映画かいといいたくなってしまうではないか。
あとは自分で想像するから、余計なことはしないでチョーダイな、である。
そんな結末が本編に採用されなくてよかった。

本の中に、映画がまだ制作中のころ、キューブリックがコンピューターHALの声を女性にやらせようかと思案するくだりがある。
これと同じことをわたしも考えたことがある。
ボーマン船長が狂ったコンピューターの思考回路を切断しようとすると、しだいに意識を失ってゆくHALはひとり言のようにいう。
「デイブ、やめてください」、「わかるんです」、「ぼんやりしてきた」、「感じる」
このセリフを女性の、それも広瀬久美子 (NHKのもとアナ) のようなセクシーな声で言ったらどうだろう。
ひわいととられるか寓意がいっぱいととられるか、むずかしいところだけど、キューブリックなら、官能的でありながら哲学的という傑作に出来たんじゃなかろうか。

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