アムール河の波
トルコ旅行の付記みたいになるけど、わたしはその旅で、帰りの飛行機からながめたロシアの荒涼とした雪景色が忘れられない。
機内のモニターで見ていると、飛行機は乗り継ぎのモスクワを出たあと、シベリアの上空を飛んでハバロフスクに接近していた。
窓から見えるのは一面の白い世界である。
そんな中を蛇行する、あるいは無数に枝分かれした大河が流れているのが見える。
1月から2月にかけての旅だったから、もちろん川面はまっ白に氷結しているのである。
わたしは冬のシベリアに思いをはせる。
この厳寒の世界に、キツネやウサギ、イタチ、テンのような無数の生きものが生息していることを疑わない。
死んだようなこの世界こそが、現在では世界中でもっとも多くの野性が見られるところだということを信じて疑わないのである。
わたしの部屋にロシア民謡のCDがある。
その中の 1曲 「アムール河の波」 は、わたしにこうしたシベリアの原野を思い起こさせる。
歌の後半で、いっしゅん歌声がとぎれ、やがてふたたびかすかなコーラスとなってわきあがってくるところが、まるでタイガ (針葉樹の森) の奥から聴こえてくる妖精たちの歌声のようである。
わたしが飛行機の中から見た大河は、アムール河そのものだったようだ。
その岸辺に立ってみたいものだと切実に思う。
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