船旅
だらしない話だけど、暑さにめげて部屋にとじこもりというのはウソじゃない。
それでもさいわい、わたしは部屋にとじこもっても退屈しないタイプなので、本を読んだり、録画して貯まりにたまったテレビ番組を観たり、あい間に洗濯したりメシの支度をしたりで、けっこう忙しいのである。
録画したテレビ番組の中に「世界の船旅」という紀行番組があった。世界のあちこちを豪華な客船で旅してまわる番組である。
こういう旅もいいなと思う。
いいなと思っても、では出かけるかってわけにはいかない。
わたしも代表的貧乏人だもんで。
船の旅というと、ゆったりした客室にくつろいで、豪華な食事をしたり、バーで一杯やったり、船上のプールで泳いだり、甲板で寝そべったり、演奏会やダンスパーティに参加したりするものだと思っている人がいるかもしれないけど、そればっかりが船の旅じゃない。
このブログを読んでいる人は、わたしが若いころ海上自衛隊にいて、3年ばかり艦上生活をしたことを知っているかもしれない。
自衛艦と豪華客船では乗り心地がだいぶちがうけど、両者に共通したよろこびもあるのである。
艦(ふね)に乗り組んでいるとき、わたしは陸上ではぜったいに見られない美しい景色、印象的な風景、神秘的な光景などを無数に見た。
水平線からのぼる、あるいはしずむ太陽、銀河をありありとながめることのできる地球上でもっとも広大な星空、艦と並行してとびはねるイルカの群れ、海面を飛翔するトビウオたち、舷側にくだける波のなかのクラゲや夜光虫の光芒、台風通過直後のまぶしいべた凪ぎの海、海と陸のさかい目あたりにくらくらともえる蜃気楼、冬の湾内にたちこめる水蒸気の雲のなかをゆく僚艦の幻想的な光景などなどである。
ゆったり客室や豪華な食事はどうでもいいけど、わたしはもういちど、陸上では見ることのできないさまざまなものを見たい。
そんなことを考えているうち、比較的かんたんに希望をかなえる方法があることに気がついた。
東京から小笠原にいく船の旅は、25時間かかって、しかも四方すべてが水平線という、まるで太平洋のまん中にいるような気分を味あわせてくれる。
25時間というのは、わたしにとって退屈しないで、しかも船の旅を満喫するのにちょうどいい時間である。
うーむと、わたしはいま小笠原への旅について考えているところだ。
スポンサーを募集したいけど、世間さまに同情してもらうのはキライだし、拘束されて旅をする気にもなれないから、ここはやっぱ自分の財布の中身と相談するしかないみたい。
キビシイ。
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