行ったつもり
「食ったつもり」 になってやせガマンする江戸っ子という落語があったと思うけど、最近のわたしは 「行ったつもり」 のやせガマン。
わたしはテレビ番組を録画するためにDVDプレーヤーを持っているけど、この夏はそのハードディスクに旅の番組ばかりが貯まってしまった。
ざっとながめてみただけでも 「南米大陸一周の旅」 シリーズ、「アフリカ縦断の旅」 シリーズ、「世界・夢列車に乗って」 が2本、「世界の船旅」 が3本、「世界街歩き」 がひとつ、「シェフが巡る地中海豊かなる食の旅」 2本、「小さな旅・苗場山」、そしてこれは旅の番組とはいえないけど 「OCEANS」 という世界の海をめぐる科学番組が5本などである。
このうちの南米大陸やアフリカは、特別な装備をそなえた取材チームによる秘境や辺境の旅ではなく、ふつうの観光客たちが観光地を観てまわる旅で、テレビの前にあぐらをかきながら、じっさいに旅をしている気分が味わえる。
夢列車や船旅にしても、お金さえあれば (そのへんが大きな問題ではあるけれど) 誰でも体験できる観光の旅である。
世界中を観てまわりたいけど、ちと貯金が足りないというわたしにとって、ウサを晴らすのにいい番組ばかりだ。
「南米大陸一周の旅」 には観光客たちがギアナ高地に登るシーンが出てきた。
ギアナ高地といえば、下界から隔絶したテーブルマウンテン上にある平たんな場所が、ここでしか見られない珍しい動植物が独自の生態系を築いているということを、わたしはむかしテレビの科学番組で観て知っていた。
下界から隔絶しているくらいだから、とても観光目的で行ける場所ではないと思っていたら、それがいまではトレッキングの名所になっていて、大勢の観光客が押し掛けているそうである。
そのうち車いす用のスロープやエスカレーターまで出来るんじゃあるまいか。
そうだよな。いまどき地球上に秘境なんてモノがあるなんて信じているほうがおかしいんだよなと、複雑な気持ちである。
地球はいよいよテレビのまえに座りこんだ座敷翁にふさわしい星になってきた。
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