日月山
この夏はあっちこっちのチャンネルで、マッターホルンだとかギアナ高地、ボルネオのキナバルなんて登山番組が放映された。
わたしは山登りが好きなので、こりゃいいと、さっそくかたっぱしから録画させていただいた。
トシのせいか、旅行でも登山でも、こうやってテレビを観て行ったつもりってのが目立つよな、最近は。
マッターホルンは登山家のあこがれの山らしいけど、テレビを観ていても登山者や観光客が多いのがちょっと気にいらない。
わたしの理想はそういう余計な人間がいない静かな山をひとりでぶらぶらすることである。
孤独な登山の素晴らしさは、それを愛する人や体験した人にしかわからない。
そういう点では、ギアナ高地もキナバルも似たようなもん。
世界の中の、およそしろうとが登れる山という山のすべてが、初もの好きのトレッカーたちによって静寂をやぶられているようだ。
どこかにひとり静かに登れる山はないものか。
そんなわがままなわたしにとって、あこがれの山は中国にある。
広大な中国大陸には、いまだ登山家や観光客の足あとがまれな山がいくつもある。
2005年にわたしは中国の青海湖あたりをぶらぶらして、日月山という秀麗な山を見た。
この山に登ったという記録をみたことがないから、ひょっとするといまだかって(公けには)征服されたことのない処女峰かもしれない。
現地のチベット族やモンゴル族が登っていたとしても、それはせいぜい沈黙を旨とする猟師や薬草取りぐらいのものだろう。
中国にはそんな未登峰がたくさんあるのである。
ただ、わたしは無謀な登山をつつしむ意気地なしの登山家だから、とてもロッククライミングまがいのことをしてまで山に登りたいとは思わない。
わたしの登山は思索であって、スポーツではないといったらカッコつけすぎだけど、日月山はそういう点でも、なだらかな草原がそのまま山に続いていて、マッターホルンよりずっと楽に登れそうに見えた。
ひとつ出かけるかと思ったけど、うーん、人生をもういちど、30歳ぐらいからやり直さないと無理だろうな。
体重増加だし、登山靴もカビが生えちゃってるし。
だいたい名前からするとそのへんのハイキング・コースみたいな山だけど、土台が高いから、この山は富士山より高いかも。
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