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2010年10月30日 (土)

忘れえぬ人々の2

「忘れえぬ人々」の第2弾。
自衛隊にいたころ、艦(ふね)が房総の館山湾に仮泊したことがある。
そんな日の昼さがり、たまたま艦が休養日課だったので、わたしはヒマつぶしに艦橋にある望遠鏡であっちこっちのぞいていた。
自衛艦の望遠鏡というのは、よく観光地に100円入れると3分間観られる望遠鏡があるけど、あれとほぼ同じようなもので、海軍が必要にせまられて使うものだから拡大率はかなり大きい。もちろんお金はとらない。
拡大率が大きいというものの、艦の上から市内の銭湯がのぞけるほどじゃない。
それでも岬の突端でいちゃいちゃしているアベックなんかは見えるから、沖に自衛艦が停泊しているようなところでいちゃつく恋人同士は要注意だ。

時期は冬のころだったけど、館山という地域がら、たぶんそれほど寒くはなかったのだろう。
わたしは白いセーターとタイトスカートの(たぶん)若い娘が、幼児の手をひいて海岸をぶらついているのを見つけた。
それだけである。
さすがの艦の望遠鏡でもそれ以上のことはわからない。
顔もわからないし、この2人が親子なのか姉弟なのか、それとも近所の子供を遊ばせている女子高生なのかどうかもわからない。
それでもわたしは自分で勝手に、この娘がとっても美人で清純で魅力的な子であると決めつけてしまった。
想像力がひとり歩きしてしまうという性癖は、どうもそのころからわたしの欠点だったようだ。
とうぜんながら艦の上から、呼べど叫べど海岸まで声がとどくわけもない。
SFの中には、顕微鏡の中に発見したもうひとつの世界に住む女性に恋する男の物語があるそうだけど、それといっしょで、わたしとこの娘はぜったいに手のとどかない別々の世界に住んでいたようなものだ。
なぜかこの娘のこともたまに思い出すから、彼女も「忘れえぬ人々」のひとりである。

そんな縁もゆかりもない娘のことをよくおぼえているものだと言われそうだけど、なにしろわたしの青春時代は、いまほど男女がかんたんにくっつく時代じゃなかっし、おまけにわたしはそうとう晩生のほうだったから、すぐにくっついた娘の思い出というものはあまりないのである。
もっとも、すぐにくっついていたら、この記事も「忘れえぬ人々」ではなく「早く忘れたい人」になっていたかも。

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