トゥルー・ヌーン
世間にはBSを観られないという気のドクな人もいるらしいので、先日録画したアジア・フィルム・フェスティバルの出品作 「トゥルー・ヌーン」 という映画について書く。
舞台はソ連崩壊当時のタジキスタンの山村である。
この村にはソ連の気象観測所があり、ソ連人の老技師がひとり放置された状態で勤務している。
そんな彼と、ゆったりしたペースで生活していた村人のところへ、いきなり軍隊がやってきて、村のまん中に鉄条網で柵を作ってしまう。
指揮官がいうのには、国が独立して今日からここが新しい国境に設定された。
村民は30分以内にどっち側の村に帰属するか決めろと、ムチャな話。
この映画はてんやわんやの騒動になる村人たちの悲喜劇を描いている。
といいたいけど、喜劇の要素はちと希薄。
これを強調すればもっとおもしろい映画になりそうだったけど、このあたりがNHK出資映画の限界か。
映画の終りのほうに、老技師の努力でようやくいっしょになれた、引き裂かれた恋人同士の結婚式がある。
これもNHK出資映画のお約束事項。
つまり結婚式やお祭りや伝統行事などを映画に取り入れて、その民族の文化やめずらしい風習を紹介することが望ましいということなのだろう。
しかし、けっして出来のわるい映画ではない。
最近のご都合主義のアメリカ映画なんぞに比べれば、なかなかの感動作といっていい。
映画について、きわめてキビシイわたしが絶賛したくなる要素もある。
村の男たちはつばのない帽子をかぶり、女性たちは頭にスカーフをまいて、独特のパターンのワンピースを着たり、スカートの下にズボンをはくといったイスラム・ファッション。
これはわたしが行ったことのある中国の新疆ウイグル自治区とよく似ている。
そう思って調べてみたら、タジキスタンという国はウイグル自治区のすぐとなりの国だった。
物語の背景は雪をいただいた険しい山脈で、これがパミール高原の山とすれば、わたしはそれを裏側、つまり中国側から見たことがある。
村の中には土壁の素朴な民家が建ちならび、ウシやロバが飼われ、ポプラの木が高々とそびえている。
背景を見ているだけでなつかしい感慨におそわれる、わたしにとってこれはそういう映画なのである。
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コメント
なぜいつも皮肉ばかり言ってるんですか?
投稿: | 2010年10月10日 (日) 00時49分
このコメントを書いたのが誰だかわからないけど、それはつまり、わたしが人のわるい男だからです。
ただし悪意で解さずにユーモアととらえてほしいんですけど。
投稿: 酔いどれ李白 | 2010年10月10日 (日) 01時13分
私はユーモアがわからない悪い男です。
投稿: | 2010年10月12日 (火) 09時52分
なにが言いたいのかわからないけど、ユーモアがわからない人を悪い人だなんて言ったおぼえはありませんよ。
世の中にはわからない人のほうが圧倒的に多いみたいだから、たぶんあなたはふつうの健全な精神の持ち主でしょう。
文章で使う場合の、「悪い」と「わるい」の違いがわかりますか。
投稿: 酔いどれ李白 | 2010年10月12日 (火) 12時58分