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2010年11月 8日 (月)

電気ブラン

395

昨日の日曜日は 「神谷バー」 へ行ってみた。
正確には店のまえまで行ってみた。
神谷バーってのは浅草の一丁目一番地の1号にある日本最古の洋風バーである (お店の紹介文にそう書いてある)。
創業は明治13年というからこれは古い。

じつは品行方正なわたしはこの店のことをぜんぜん知らなかったんだけど、昭和前期の青少年で、呑ン兵衛の悪友たちのあいだではむかしから有名な店だったそうだ。
これもそういう連中から教わったのだけど、この店の売りモノが 「電気ブラン」 という酒だそうである。
電気ブラシかいと間違えるくらい、酒の名前としては奇妙きてれつな名前だ。

店の紹介文によると、もともとは電気ブランデーといい、じつは純粋のブランデーじゃないもんだから、やがて電気ブランに落ち着いたとある。
電気という言葉はいまじゃかなりダサイ言葉になりさがってるけど、明治時代にはハイカラなものを象徴する晴れがましい言葉というのでつけられたらしい。

とくに呑ン兵衛じゃないものの、好奇心の旺盛なわたしは、いちどこの店に行ってこの奇妙な名前の酒を味わってみたかった。
で、足の運動をかねてのこのこと出かけてみたのだけれど・・・・・・

いや、日曜日の浅草はすごい混雑だった。
銀座や青山、原宿とはどこか異なるタイプの人々が、雷門から仲見世通りにかけて押し合いへしあいしていた。
混雑のキライなわたしがさっさと神谷バーへ行ってみると、わたし同様に電気ブランを飲んでみようという好奇心いっぱいの人々が、空席待ちで行列をつくっていた。
わたしは混雑もキライだけど、義務でないかぎり行列に並ぶのもまっぴらという人間だから、ついに店内で飲むことをあきらめて、店頭で売っていた360ml のボトルを買っただけで引き上げてきた。
アルコール度数は30度、40度の2種類があるそうで、わたしが買ってきたのは40度のほうだからかなり強い酒だ。
帰宅して飲んでみたら、なかなか口あたりがよろしく、女の子でもついはかどってしまいそう。

説明書によると、神谷バーは明治、大正時代に多くの文豪に愛され、萩原朔太郎もよく通って、詩までつくっているそうである。
なるほど。
わたしの部屋でレトロな雰囲気を想像しようっていうにはそうとうの努力が必要だけど、電気ブランをちびちびやりながら、窓の外に枯葉の落ちるのをながめ、人生の秋についてしみじみともの思いにふけるのもわるくない。
秋の日の、ヴィオロンのためいきの、身にしみて、ひたぶるにうら悲し、なんちゃって。

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