弁護士メイヒュー
ニュージーランドの地震で日本人初の死者が確認されたとのこと。
富山のもと高校校長だった女性で、教職を定年で辞したあと、さらに外国語にみがきをかけ、将来は研究者として働きたいと語学留学のとちゅうだったという。
これを聞いてモームの 「弁護士メイヒュー」 という短編小説を思い出した。
この小説を読んだことのある人には察しがつくと思うけど、このもと校長の死に方は、人間の死に方としてはじつにみごとなものだといいたいのである、わたしゃ。
「弁護士メイヒュー」 の最後はこんな文章で終わっている (龍口直太郎訳・新潮文庫)。
『かれの生涯は成功だった』
『かれの生き方は、文句なしに完璧な姿なのである』
『かれは自分のしたいことをして、決勝点を眼のまえに望みながら死んだ』
『そして、目的が達成されたときの幻滅の悲哀などを味わわずにすんだからだ』
ほんとうはこの文章のまえに、「私の眼から見ると」 という言葉がある。
モームは皮肉屋として知られていたから、彼の眼で見られちゃたまらない。
たぶんこのもと校長さんのほうは、目的が達成されたときの幻滅の悲哀を感じることはなかっただろう。
その死は一瞬のことで、苦しみや痛みを感じる余裕もなかっただろうから、彼女は希望にもえたまま、そのすばらしい人生を終えたのだろうと思う。
えっ、わたし?
あいかわらずうじうじとだらしなく生きております。
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