被災地への旅/廃墟の仏像
大理石海岸をあとにしてさらに北上を続ける。
とちゅうでまたいくつかの小さな港に寄ってみた。
ある場所では国道をまたいで内陸部にまで津波の痕跡が残っていた。
海から陸地に向かって細長い平地がのびていて、津波はその平地の最深部にまで押し寄せたらしい。
民家などひとつも残っていない。
国道のわきに破壊されたマルニというスーパーがあった。
赤い天幕がぼろぼろになってぶらさがっていた。
車を停めて国道わきの被災地を歩いてみる。
廃墟の中に、どこかの報道カメラマンが見つけて、写真のモチーフにしたらしい仏像が立っていた。
神も仏もない災害地にぽつんとたたずむ観音様の像である。
うーむと、複雑な気持ちでわたしもそれを写真に収める。
わたしみたいなバチ当たりが災害に遭うならわかるけど、この地方の人たちになんの罪があっただろう。
人間の運命を決めるのはいったいなんだろう。
だいたいこの観音様だけど、震災後 1カ月以上もほうっておかれてるってことは、持ち主も流されてしまったのではないか。
そうだとすると観音様自身も、津波で身寄りのない境遇になってしまったということになる。
なんだ、なんだ、なんだ。
遠藤周作やベルイマンじゃないけど、“沈黙” という言葉がぐさりと胸につきささるぞ。
わたしがお坊さんだったら、まちがいなく宗教不信になるところだ。
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コメント
驚きです。
破壊されつくした地に立つ観音様ですか。
木彫りですよね。すさまじい波で回遊したにもかかわらず慈悲深い姿がそのまま残っているとは。
それに、この仏像をこの場所に立ち上がらせた人々もいるのですね。
投稿: タマ | 2011年5月17日 (火) 09時02分
この像をここに立たせたのは、たぶんどこかのマスコミのカメラマンじゃないでしょうか。
被災地にたたずむ慈悲深い観音様なんて、これほど皮肉な写真はありませんからね。
投稿: 酔いどれ李白 | 2011年5月17日 (火) 12時36分