被災地への旅/サンマの目に泪
大船渡の漁港にある海産物倉庫では冷凍されたサンマの廃棄作業が行われていた。
出荷直前のダンボール箱に詰められたサンマを、箱から出して大きなダスターボックスに詰め替えていた。 もったいない。畑の肥料にでもなるんだろうか。
サンマだから彼らの本分はもちろん、大根おろしを添えた塩焼きか、せめてカバ焼きであるべきで、それがむなしく生ごみとして処理されるなんて、いったいオレたちの存在はなんだったのだと、サンマたちが形而上学的問題に悩んでいないという保証はない。
訴えるようなサンマの目を見ていると、しみじみそう考えてしまう。
倉庫で箱詰めされた海産物なら処理も楽だけど、あっちこっちで生ものの魚が大量に土砂と混じっているそうである。
わたしが見た範囲でも、海がだいぶはなれた農家の庭に、網に入ったままの牡蠣が打ち上げられていた。 世が世であれば、ポン酢かなんかでありがたくいただいたものを。
漁港のわきのいくらか高くなったところに線路があり、そこに2両連結の列車が停まったままになっていた。
線路がさびついているところをみると、震災の日からそこに停車したままであるらしい。
こういう列車は、ほうっておくと鉄道マニアのためにプレートやハンドルを盗まれて、ハダカにされてしまうそうである。
こういうのも火事場泥棒というのだけど、鉄道マニアの諸氏はちゃんとわかっているのだろうか。
見上げると、近くの送電線にゴミがひっかかっているのが見えた。
へえ、あんなところまでと、鉄道マニアでないわたしはまたべつのところに感心する。
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