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2011年10月15日 (土)

真夜中のマリア

図書館で借りてきた野坂昭如を読む。
ひさしぶりに読んだこの作家の作品が 「真夜中のマリア」。
野坂小説中の傑作とされている (かどうか知らないけど) 作品である。

この小説の中に親父のオナニーを目撃する息子のエピソードが出てくる。
息子が親父に、誰を想像しながらカイテいたの訊くと、親父は平然として真由美ですと答える。
あの子も近頃だいぶ女めいてきましたねと続く。
真由美というのは息子の、まだ女子高生の妹で、ということは親父にとってじつの娘で、これじゃあ近親相姦になってしまう。

この小説はこんな近親相姦だとかホモ、レズ、変態、乱交、ヤク・パーティ、男色を試してみる主人公、処女を見分ける老人、葬式パーティで死人をおもちゃにするフーテン仲間、親子どんぶりを味わっちゃう義母、他人の情事をのぞき見するのが大好きな祖母など、むちゃくちゃなセックス餓鬼のオンパレードだ。
当時の人気作家、芸術家なども実名で揶揄されていて、ちとハチャメチャであるものの、これが70年前後の風俗、リベラルな意識であったことも間違いないのである。
連載されていたのは平凡パンチ、挿絵は当時人気のあった伊坂芳太良であることも、この小説のアバンギャルドぶりを物語っている。
ふと思ったけど、スタンリー・キューブリックがこの原作を読んだら、「時計じかけのオレンジ」 より先にこっちを映画化してたかもなんて。
いまどきこんな過激な小説が若者のオピニオンになることがあるんだろうか。

わたしは野坂昭如のファンなので、昨今の若者にもぜひお薦めしたいところだけど、この小説をいきなり文学少女の女子高生なんかに読ませるのは、いくらなんでも乱暴である。
やはり野坂文学に挑戦しようという若者に対しては、「火垂るの墓」 あたりを薦めておくのが無難かもしれない。
マトモな人間であるわたしはそう考えたけど、いやいや、この小説にも描かれているように、いまどきの女子高生ならこれしきのことで動じることはないかもしれないとも思う。
ひとつ、図書館でとなりに座ったミニの女子高生あたりに感想を訊いてみたいところだけど、やっぱりヘンタイと思われるだろうなあ。

この作家の作品にはほかに、アダルト業界の住人たちを描いた 「エロ事師たち」、詐欺師たちを描いた 「ゲリラの群れ」、映画 「おくりびと」 に先立つこと40年以上まえの 「とむらい師たち」 など、常人の知らない裏の社会を描いたものが多い。
あらためて作家の豊富な知識、そしてとめどなく流れ出る妄想力に感心してしまう。
もちろんここに挙げた作品は、野坂文学の一面でしかないことも百も承知だけど。

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