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2011年10月10日 (月)

シナのルーレット

ミステリーの結末をあきらかにするのはルール違反である。
そんなことは百も承知だけど、以下に述べる映画については、ひじょうに地味な映画で、テレビ放映されることもリバイバル上映される予定もぜんぜんなさそうだから、みんなバラしてしまう。

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ずっとむかし、たまたま入った映画館で 「シナのルーレット」 というヨーロッパ映画を観た。
シナは “支那” のことで、このタイトルとヨーロッパ映画というキーワードだけで、なんとなくミステリーかサスペンス映画だなと思ってしまった。
映画はじっさいにミステリー映画だったから、なかなか秀逸なタイトルじゃなかろうか。

よく知らないけど、「シナのルーレット」 というのは、ふた組に分かれたグループが、たがいにヒントを出しあって特定の誰かを当てるというゲームらしい。
むかし人気のあった 「私は誰でしょう」 というテレビ番組みたいなもんか。
じつは映画についてなんの予備知識もなしに、ただわたしのお気に入りのアンナ・カリーナという女優さんが出演していたから、ふらふらと映画館に入ってしまったのである。

映画のなかに中学生くらいのませた少女が登場して、彼女が狂言まわしのような形で物語は進行する。
ほかの登場人物は少女の両親、両親のそれぞれの不倫相手、家庭教師、別荘の管理人をしている母と息子などである。
この少女は屈折していて、ひじょうに意地がわるい。
原因は父親と母親がともに不倫をしていることなどもあるのかもしれない。

父親の別荘で勢ぞろいした彼らは、雨に降りこめられて退屈しのぎにシナのルーレットというゲームを始める。
その最中にいじわるな少女は彼らの秘密をつぎつぎに暴露していくのである。
全員の秘密がどんなものだったか、ひとつひとつまでおぼえていないんだけど、たとえば別荘の管理人をしている老婆は、息子に詩作の才能があることを誇りにしているのに、少女はづけづけと宣告する。
そんなのウソよ、彼の詩なんてみんな盗作じゃないのと。
これが図星だから始末がわるい。

こうやってその場の全員に疑心暗鬼と相互不信の気持ちを生じさせ、じりじりと絶望的状況に追いこんでいくのである。
やがて屋敷の中に銃声がひびく。
誰かが自殺したらしいのだけど、考えてみると映画のラストでは、登場人物のほとんど全員に自殺する理由がある。
いったい自殺したのは誰なのか。
それをあきらかにしないまま映画は終わってしまう。
つまりこの映画では観客もゲームの参加者なのである。

これは傑作だと思ったわたしは、後日、そのころあこがれていた彼女を誘って、もういちど観に行くことにした。
彼女が誘いに応じたかどうかは秘密だ。  くそ、当ててみろ。

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