變臉/この櫂に手をそえて
ここんところ政治ネタが少ないのは、どじょう宰相のおかげ。
どちらに対しても、そのとおりです、考慮しときますっていう首相が相手じゃ、いちゃもんをつけるネタもありようがない。
困っている自民党と同じ状態です。
で今回もまたテレビや映画のお話から。
海外旅行や辺境を旅するテレビ番組がどんどんたまると書いたばかりだけど、そんな中に 「世界の山岳鉄道/中国・成昆鉄道」 という番組があった。
なんとかいう男性俳優が、中国の成都から雲南省昆明まで列車で旅をするもので、観ているとグリーンの無骨な列車、駅のたたずまい、人々の服装などが、なんだかわたしが熱心に中国を歩きまわっていたころによく似ている。
で、調べてみたら、この番組は10年ほどまえに放映されたものの再放送だった。
それならわたしの旅と合致するからさもありなんだ。
ただし、わたしは成昆鉄道というのに乗ったことはない。
番組の中に楽山という街が出てくる。
この街のはずれには楽山大仏という、山をけずって彫られた高さ71メートルの巨大な仏像がある。
見た感じはあまり美的なセンスを感じない大仏だけど、なにしろ中国最大 (世界最大とも) の仏像なので、それだけで最近は日本からの観光客も多いようだ。
わたしもこの大仏には思い入れがある。
96年に公開された、いや、公開されたらしい中国映画に 「變臉/この櫂に手をそえて」 という作品があった。
らしいというのは、この映画が映画館で公開されたかどうか知らないからである。
わたしが観たのはテレビで放映されたものだった。
變臉は 「へんめん」 と読む。
これは中国に伝わるユニークな奇術のことで、顔につけたマスクを目にもとまらぬ早さですり替える老人と、その伝統奇術の跡取りとして買われた不遇な少女の物語である。
跡取りはほんらい男の子に継がれるものだったのに、ひょんなことから老人が買い取ったのは女の子で、そこから悲喜劇が生まれるのだけど、これは当時中国の農村に根強かった男尊女卑の考えを改めさせるというプロパガンダ映画であったかもしれない。
ちなみにこの老奇術師を演じたのは、NHKの中国語教室や、「大地の子」 ってドラマに出演していた中国の名優・朱旭さん。
女の子は無名の、しろうとだったっていう説もあるけど、舟の中で逆立ちをしてみせるあたりはただ者じゃないから、ほんとうに中国雑技団のアクロバットのこころえがあるらしい少女だった。
映画は、いいトシこいたおじさんのわたしに涙をぽろぽろ流させるというまれにみる感動作で、その中にこの楽山大仏が出てくる。
主人公の女の子が大仏の足もとでたわむれる場面があるだけなんだけど、なにしろ映画が感動的だったから、大仏そのものもわたしにのこころに深く刻まれてしまった。
映画はフィクションで、少女ももちろん架空の人物である。
にもかかわらず、わたしはいつか大仏の足もとに立って、これがあの少女が立っていた場所かと、しみじみ感傷にひたってみたいと思うのである。
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