アイス・カチャンは恋の味
いつのまにかまたアジア・フィルム・フェスティバルの季節だ。
内情はよく知らないけど、アジアの、映画制作もままならない国に、NHKがわたしたちから集めた視聴料を出資してやって、貧しい芸術家たちを支援しようっていう試みらしい。
それはそれでいいことだ。
過去にもあったけど、このフェスから、ベトナム映画 「ニャム」 みたいな思いもかけない秀作が出現していることも事実なのだから。
今年のフェスの作品の中に、「アイス・カチャンは恋の味」 という映画がある。
アイス・カチャンというのはかき氷のことだそうだけど、あまりおもしろそうじゃないタイトルである。
それがテレビで放映されたので、録画しておいた。
ぼうーっとした若者の初恋の思い出を描いた映画で、あまり頭がよさそうでないこの若者が監督した映画だというから、ちょっと意外。
意外なことはもうひとつあって、これは深刻な内容をユーモアとペーソスでくるんだ、そうしょっちゅうはお目にかかれない傑作だったこと (とわたしは思う)。
しかし、ストーリーを説明するのは簡単だけど、淡くせつない観念的な感情については、どうやって文章で説明したらいいだろう。
考えているうち頭がいたくなって、どうせ一文になるわけでもないブログなんだしと、そんな努力は放棄することにした。
ちとずるいけど、以下の文章でがまんしてもらっちゃおう。
この映画を観終わってから考えた。
ここ 10年か20年のあいだに、このくらいジーンときた映画があっただろうかと。
あったかもしれないけど数は多くない。
最後の別れしなにヒロインが涙をみせるかどうかはともかく、べつべつのおもわくを抱えた登場人物たちが通りで鉢合わせする場面や、最後に主人公とヒロインがほんのすぐそばで交差しながら、相手に気がつかずに雑踏の中に消えてゆくなんて設定は、ほろ苦い青春映画としてなかなか気がきいている。
ケンカっ早いヒロインもすてきだし、あまり清潔とはいえない華人住宅や水上生活者の町並みなど、随所に見られるマレーシアの風物もわたしにとって、なかなか興味あるところだし。
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