ゴヤ
前項の記事は、じつは近いうちにゴヤの 「着衣のマハ」 という絵を観にいくつもりなので、その伏線のつもりだった。
絵を鑑賞するにはその絵の背景について知っておいたほうがいいのである。
そういうわけで、下調べのつもりで図書館に行ったら、堀田善衛の 「ゴヤ」 という、とっても理屈っぽそうな本が目についた。
ぶ厚い文庫本で、しかも4冊に分かれている。
ネットで調べたら、この本を読んで感動した人が、ほかに大江健三郎の本も読んでいるという記事を見つけたから、それだけで読む気がなくなったけど、理屈っぽいことにまちがいがなさそうだ。
理屈っぽい本はキライである。
しかし下調べなんだからとちょいと目を通してみた。
たちまちひきこまれてしまった。
つらつら考えてみると、おもしろい本がいい本とはかぎらないけど、いい本がおもしろい本であるというのは真理らしい。
この本のおかげで、ゴヤの時代がどんなものであったかよくわかった。
ゴヤといえばスペインを代表する偉大な画家だけど、当時のヨーロッパでは画家というのはたんなる職人で、仕事はもっぱら肖像画、つまり現代の記念写真屋みたいなもんだったそうである。
そして彼の生きた時代のスペインはそうとうイカれた国だったらしい。
政治的には、世界に植民地をもっていた栄光の時代は過去のものとなり、ろくでなしの国王とその息子、ナポレオンの仏軍、国内の自由主義者などが入り乱れて、まさに激動の時代といってよかったそうである・・・・・・
当時のスペインの王侯貴族たちのあいだには、日本の平安貴族のようなフリーセックスがまん延していたらしい。
やんごとなき貴婦人たちも、手近にいる男なら誰だっていいって具合で、若いころの自画像ではあまりモテそうな顔をしていないゴヤも、他人の奥さんであったアルバ公爵夫人と浮名を流しているくらいだ。
添付した画像の上は若いころのゴヤ (左) と熟年のころのゴヤ (右)。
しぶい熟年のころならともかく、若いころのゴヤならわたしのほうがイイ男だ。
これだけならゴヤは、たまには貴族の奥さんともねんごろになっていたモテモテの宮廷画家ってところだけど、彼の偉大さはそんなめぐまれた境遇にあまんじることなく、やがて 「1808年5月3日」、「気まぐれ」、「戦争の惨禍」 などを描いて、人間の愚劣さ、残酷さを告発し、その本質にせまる画家に脱皮したところにある。
しかしそんなことはたいていの人が知っている。
わたしがゴヤを好きなのは、添付した下の画像、「我が子を喰らうサトゥルヌス」 という絵だけど、こんな絵を食堂にかざってよろこんでいたというから、彼もまた変人同盟の名誉会員の資格のある人だと思うからなのだ。
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