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2011年12月 1日 (木)

切腹

「切腹」って映画を観た。
古い映画だから若いころ観たのかっていうのかと、そうじゃない。
昨夜テレビで放映されたものを録画して、今日観た。
若いころ観た小林正樹の時代劇は「上意討ち」ぐらいなもので、この映画ははじめて観た。
なんでも最近公開されたばかりの、例の海老蔵クン主演の映画「一命」ってのはこのリメイクだそうだ。 しかしそうではないと三池崇史サンあたりは言い張っているそうだ。

物語は江戸時代、生活に困窮した浪人が、大名の屋敷に押しかけてここで切腹させろと言い出す。
体のいいいやがらせである。
体面を重んじる大名が、ま、ま、今日のところはこれでと、いくらかお金をめぐんでくれるのを期待しているのである。
ところがある屋敷で、そんな風潮を苦々しく思う大名(の家老)が、やりたきゃやりなさいと開き直ってしまう。
ひっこみのつかなくなった浪人は・・・・・というのがストーリーである。

のっけからモノクロの、計算されつくした重厚な画面にひきつけられた。
これはすごい傑作だと思ってしまったくらいだ。
ユーモアのかけらもない、ものさしで寸分の狂いもなく作られたような映画だけど、まあ、これはこれでそういう映画だと思えばわるくない。
武士道の非情さを描いた傑作といってもいい。
左翼作家の体制批判映画といってもいい。

ただ、観ていて気分がわるくなった。
けっして残酷シーンのことをいってるわけではなく、当時の武家社会が気のドクになってしまったのである。
映画はフィクションだし、あまり事実に拘泥していたんでは、おもしろくもおかしくもない映画になってしまうことは承知だけど、現実の武家社会というのはあんなに非情なものではなかったと思う。
たかりに来る浪人にへきえきして、勝手にやんなさいと段取りを整えてやることはあっても、土壇場で、もうそのへんでいいだろう、勘弁してやんなさいで終わったんじゃなかろうか。
貧乏浪人を切腹させたなんてことがあると、さっそく近松門左衛門あたりが芝居にして、大名にとって不名誉な事実が長く語り継がれることになってしまうのではないか。

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