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2011年12月10日 (土)

空腹の王子

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山口文憲さんの 「空腹の王子」 って本を図書館で借りてきた。
わたしの知り合いが、コレ、おもしろいから読んでみたらと薦めてくれたものである。
たぶんその知り合いは、わたしがそうとうひねくれた人間であることを知っているから、同じような傾向のこの本をおもしろがると考えたのだろう。
たしかにこの本は世間の常識をひっくり返すようなおもしろい本だけど、ひねくれ者のわたしは、ひねくれ作家の書いた文章を、そのまま感心するほど素直な人間ではないのである。

「空腹の王子」 は食べ物について書かれた本だけど、じつは食べ物よりもその周辺の些細なことばかりで、そういう本ではないということを著者も書いている。
この本を読んでもじっさいに食べてみたいと思うようなものはほとんど出てこない。
それにひきかえ、この本にも名前の出てくる邱永漢の 「食は広州に在り」 には、読んだだけで思わずよだれの出そうな食べ物がたくさん出てくる。
だからわたしに 「王子」 を薦めてくれた知り合いにもぜひ 「広州」 を読んでもらいたいのだが、あいにくこの知り合いは中国ギライで有名な人間で、中国に関係するものはゼッタイに読まないのである (中華料理は好物のようだ)。
もったいない話ではないか。

山口文憲さんの本では 「香港・旅の雑学ノート」 がおもしろかった。
これ1冊読んだだけで著者の作風というものが明瞭になってしまう。
著者は世間の常識をひっくり返すことにいきがいを感じているような人で、それ自体はわたしもしょっちゅうやっていることだし、中には目からウロコなんて話もあり、そうだそうだと喝采を叫ぶにちゅうちょしない。

ただ、読んでいて思ったんだけど、この本からは外国語を知っているくせに知らないふりをしたり、高級レストランや豪華な食事も知っているくせに、いや、オレってそういうのがキライでねといって、ことさらなんでもない店を尊重するようないやらしさが感じられる。
このへんは現実に外国語を知らず、ほんとうに豪華な食事を知らないわたしのやっかみかもしれないけど、こういうひねりの効いた文章は、新聞記事のひとコマ漫画みたいに、まっとうな文章のあいだにひとつかふたつぐらい置いてあれば意義あるもので、こればっかりまとめて読まされるとイヤミのほうを感じてしまうのである。
そのへんを読者に感じさせないような文章が書けるようになれば、著者がどこかで書いていたように、純文学の道も芥川賞も遠くはないだろうにと思ってしまう。
ちなみに邱永漢の 「食は広州に在り」 には、しょっちゅう香港、広州あたりの有名レストラン、豪華な料理が登場するけど、けっしてイヤミではない。
食べたことはなく、これからも食べられる可能性はなく、しかもけっこう偏食のわたしに、しかもしかも目下胃ガンかなと心配しているわたしにさえ、食べたいと思わせてしまうのが本格的な文学というものじゃなかろーか。

※添付した画像は本場中国で食べた焼きそば (らしきもの)。 見るからにまずそうで、じっさいに美味くなかった。 ワタシ、油っこいものキライだし。

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