イザベラ・バード
あんまり気にしないで、なんとなく録画しておいたNHKの番組。
前日がイザベラ・バードで、昨夜はエドワード・モース。
両者とも明治時代に日本にやってきた欧米人で、前者(女性)は当時まだヨーロッパ人がほとんど足を踏み入れることのなかった日本の東北から北海道へ旅をして紀行記を書き、後者は黎明期の日本の博物学に貢献のあった人である。
わたしは鎖国の日本がようやく欧米に門戸を開放したころ、欧米人がどんなふうに日本を見たかということに興味があるので、この手の本はわりあい読んでいるほうである。
まして旅と博物学は両方ともわたしの大きな興味の対象ではないか。
そういうわけで、バードの「日本奥地紀行」とモースの「日本その日その日」は、ちゃんとわたしの家にある。
モースについて書きたいことは山ほどあるけれど、ここではイザベラ・バードについて書こう。
前述したとおり、彼女は明治時代に日本にやってきた勇敢な英国女性(おばさん)で、信じがたいことに日本人従者(通訳)ひとりを連れ、馬に乗って日本の辺境の旅をした。
ずっと後世になってやはり世界の辺境を旅したクリスティナ・ドッドウェルも、トルコでは馬で旅をしているから、英国では乗馬も淑女の必須の教養だったようだ。
ただし日本の馬はそうとうに気が荒く、バードも手こずったようである。
かっての日本人は家畜を去勢することを知らなかったそうだけど、明治時代の馬もまだタマがついていたのかもしれない。
彼女はまたどこへ行ってもじろじろ見られることに閉口している。
明治時代の東北の農村にとつぜん欧米人女性があらわれたのだから、そりゃうちの近所に宇宙人が舞い降りたような衝撃だ。
旅のとちゅうで宿屋や庄屋さんの家に泊まると、村中の人間が集まってきて、障子に穴をあけて覗いたというから、プライバシーもなにもあったもんじゃない。
それが原因じゃないだろうけど、彼女は日本や日本人についてかなりしんらつな見方もしている。
チビでガニマタで、黄色いぺったんこの顔をしている日本人、不潔な人間やノミがやたら多いことなど、ホントのことをずけずけ書き、ある場所ではどうしてこうなのかと人種論まで考察しているくらいだ。
ま、夏目漱石だって欧米人のオンナの子は可愛いねえって書いているくらいだから、これについて弁明してもムダである。
しかし、そんなふうに遠慮会釈のないことを書いているから、かえって彼女の記述はおせじ抜きの客観的なものといえるのである。
全体としては、彼女も日本の風景の美しさ、日本人のこころのやさしさを、日本人のはしくれとしてはお尻のあたりがむずかゆくなるくらい賞賛していることは変わりない。
自虐史観なんていってなんでもかんでも日本を卑下した見方しかしない人もいるけど、明治時代に日本にやってきた欧米人のほとんどが、日本を天国みたいだと絶賛していることは知っておいてもらいたいと思う。
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