不都合な真実の2
ところでネットで検索していたら 「アル・ゴアに不都合な真実」 という記事が見つかった。
これはビョルン・ロンボルグという人が書いた、「不都合な真実」 に対する反論を翻訳したものだけど、なんとなく新興宗教の屁理屈のようなものを感じる。
このロンボルグという人にいわせると、この映画はデタラメだ、プロパガンダだということである。
彼はそのつもりでいろいろ反論してみせるのだが、それはたとえばこんな具合だ。
地球温暖化によって死ぬ人が増えるだろうというゴアの主張に対し、ロンボルグは、暑さで死ぬ人は増えるかもしれないが、寒さで死ぬ人が減るからそれはまちがっているという。
現実社会では、暑さよりも寒さで死ぬ人のほうがずっと多いのだそうだ。
わたしはしろうとだけど、この意見はおかしいと思う。
暑さで死ぬというのは字義通りの意味ではなく、暑いところには疫病が多く、蚊やダニだのの疫病を蔓延させる害虫も多いということである。
そういう点を考慮すれば、寒さで死ぬ人のほうが多いとはとても信じられない。
温暖化がすすむと、そうした害虫がますます勢力範囲をひろげるということは映画にも描かれていた。
ロンボルグの意見の中には、京都議定書の推進運動より堤防を強化するほうがいいというものがある。
しかし強化された堤防が、自然災害のまえになんの役にも立たなかったことは、日本人なら誰でも知っている。
温暖化への対応は遠い未来に対する観念的なものかもしれないけど、現実的な対応がいつでも役に立つわけではないのである。
ロンボルグは他にもさまざまな文献やデータを引用して、この映画に反論する。
ゴアももちろんそういうものを引用しているのだが、引用に対して引用で応戦するのでは、どっちもどっちだ。
たとえば 「温暖化がハリケーンを増強するという説には根拠がない」 とロンボルグはいうけど、それならば根拠がないという説には根拠があるのか。
問題は大局から俯瞰して見るべきで、地球温暖化に警告するゴアの姿勢はまちがっていない。
それを、ほかにやることがあるとか、発展途上国をちょくせつ救うほうが重要だというのは、たんなる屁理屈である。
もちろん途上国への支援も欠かすわけにはいかないけど、だからといって温暖化を食い止める努力をしなくていいわけはないのだ。
地球温暖化は地球規模の災害で、最終的にこの災害から逃れられる人はいない。
世間にはさまざまな学説があるけど、根拠の決着がつくまでは、とりあえず用心しておくに越したことはないのである。
ロンボルグの意見のほうがよっぽどプロパガンダではないか。
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