白鳥と白いマスク
先日バレエを観るために上野まで出かけてきたけど、街の中にあいかわらず白いマスクがめだつ。
放射能やインフルエンザなどで、日本人の中にはマスクが日常の必需品、さらにファッションだと勘違いしている人が増えているんじゃないか。
街の中ならまだしも、劇場の中でバレエを観ている人の中にまでマスクがいるのに唖然とした。
中には音合わせをしている楽団員を見ようと、マスクのままオーケストラボックスをのぞきこむ輩までいる。
考えてもみよ。
熱心にバイオリンかなんかを調整しているとき、かたわらから白いマスクの人間が、無言のままじぃーっとこちらをながめているのを発見したときの不気味さを。
気のよわい楽団員なら、おじけづいて二度と日本には行かないとゴネるかもしれない。
おおきなお世話という人が、現代の日本ならきっといるだろう。
風邪をひいてんだから仕方ないでしょっていう人もいるかもしれない。
風邪をひいて咳が出るのは苦しいものだ。
だけど、そんな病人がなんで劇場に来るんだ。
家で寝てろ!
貧乏人だから大枚を投じた劇場の切符をフイにしたくないってのか。
そりゃ気のドクだ。
中にはそんな人もいたかもしれない。
しかし、貧乏人でしかも風邪をひいてる不運な人がそんなにたくさんいたとは思えない。
大半はファッションのつもりでマスクをしている馬鹿にちがいない。
劇場でマスクってのは演奏者、演技者に対して大変失礼なことである(エチケット読本に書いてなくても、わたしはそう思う)。
ウィーンフィルの新春コンサートをわたしは毎年観ているけど、聴衆の中にマスクなんてひとりもいない。
本物のセレブであるか、ジェントルマンであるかということは、こういうときに顕われるのである。
「白鳥の湖」を観にいって、つくづく日本のために謝罪したくなった。
帰りに上野駅で、顔を頭巾でおおったイスラム女性を見かけ、その美しさに仰天したけど、日本人のマスクはけっしてファッションにはなりえないと思う。
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