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2012年3月 1日 (木)

道化師の蝶

せんだって文藝春秋を買って、今年の芥川賞作品の 「共食い」 を読んだことはこのブログに書いたけど、そういえば同じ本にもうひとつの芥川賞作品である 「道化師の蝶」 も載っていた。
読まないのはもったいないので読んでみた。

冒頭から飛行機の中の描写だ。
しかもエイブラムス氏なる、いかにも中東系らしい人物との会話だ。
おっ、これはひょっとすると、しょっちゅう飛行機で世界を飛び回っているビジネスマンが主人公の、国際的な時事小説かなと思った。
とすれば 「共食い」 とちがって、外向きのハードな小説だ。
たちまち深田祐介や江上剛、堺屋太一らの顔がちらちらした。

しかしすぐに失望した。
なんじゃ、これは。
期待して読み始めてすぐに、わたしが読んだことのある作家としては、南米のノーベル賞作家ガルシア・マルケスの顔がひらめいた。
でもマルケスなら思想があり、瞑想があり、愛、悲しみ、絶望、孤独、皮肉、冷笑、その他の人間感情がこぼれるくらいあって、超現実や不条理の底に詩が流れていたけど、こちらにはなにもないぞ。

この小説に鱗翅目研究者という人物が登場するけど、作者がことさら鱗翅目に詳しいように思えない。
なんで鱗翅目なんて言葉が出てきたのか。
うーむと考える。
こういう小説を書くには、まず百科辞典およびてきとうな外国語辞典を目の前に置いて、その中から無作為に言葉をピックアップし、それをもっともらしい文章でつないでいけばよい。
わたしもやったことがあるから、よくわかるのである。
つまりこれは、知識や体験ではなく、全部が作者の頭の中でつなぎあわせた意味のない言葉の羅列である。
こんな意味もストーリーもない、空っぽの箱のパッケージみたいな小説をもっと読みたいと思う人がいるんだろうか。

ただ、この作家の文章はひじょうになめらかで、言葉は豊富、叙述は明瞭だから、作家としての資質はある人だと思う。
こんな妄言 (これは作家自身が 「受賞のことば」 の中で自虐的に吐露している) みたいな文章を書いていないで、もっと現実に則した物語性のある小説を書けば、おもしろくて売れる作家になれるんじゃなかろうか。
もっともそのときこそ、外向きの真の知識というものが要求されるけど。

アホらしくて途中で読むのを止めてしまったので、これ以上ごたごたいうのも止めます。

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