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2012年3月24日 (土)

唇からナイフ

002

最近、あげ足を取りたくなるような政治ネタがないので、また映画の話。
もちろん最近のCG多用映画じゃなくて、古い、あまり最近の若い人の知らない映画ってことになるけれど。

若いころ観て、どうにも忘れられない映画というものがある。
DVDなんかであらためて観るとガッカリしてしまう場合が多いけど、「唇からナイフ」 はその例外のひとつだ。
これは英国のコミック 「MODESTY BLAISE」 を、有名な監督 (ジョセフ・ロージー)、豪華なキャスト (モニカ・ヴィッティ、ダーク・ボガート、テレンス・スタンプら) で映画化したものである。
芸術映画専門みたいだったアンニュイな魅力のモニカ・ヴィッティが、意表をつく女スパイ役だ。

この映画についてネットの映画評を読んでみると、あまりかんばしいものは見つからない。中には酷評というべきものもある。
でも、あらためて観ても、わたしはなかなかおもしろい映画だと思った。

酷評する意見の中には、これがもともとは女スパイの活躍するコミックだったものだから、007みたいな活劇映画であると思っている人が多いようだ。
だからメリハリのないゆるい映画だなんて思ってしまう。
そうじゃない。
これはポップな色彩感覚や、個性的なファッション、気のきいたやりとり、当時流行っていたサイケデリック・アートの影響などを観て楽しむ、大人向けのコメディ (+ミステリー) なのである。
アムステルダムの夜の歓楽街でくりひろげられる殺人のミステリアスな雰囲気なんか、活劇映画としたってなかなかの見ものである。

欠点をあげつらうなら、たしかに出てくるコンピューターなんかチャチだし、女の子の水着もハイレグじゃない。
古くさい感じはいなめないけど、これがあの 「2001年」 より以前の映画ということを忘れちゃ困る。
とくに、最後のおふざけとしか思えないドタバタの評判がわるいみたいだけど、こういう例はパロディ版の 「007カジノ・ロワイヤル」 や、「ビートルズのHELP!」 にもあって、英国流ユーモアのひとつの特徴と思えばいい。
どうもこういうユーモアは、堅物ばかりの日本人のいちばんニガ手とするところのようだ。
わたしは部屋でだらしなくくつろぎながら、たったいまこの映画を観終わったところなんだけど、しばらくはニタニタと、上等のワインでも味わったみたいな後味がしそうである。

PS.MODESTY BLAISE は、あちらではかなり有名なシリーズ・コミックらしく、ネットで検索すると複数の画家によって描かれたさまざまなヒロインの絵が見つかる。
ここに挙げたのはそのうちの1枚で、モニカ・ヴィッティがこの絵に似ているかどうかは別にして、わたしのお気に入りのひとつ。

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