第9地区
先日、「第9地区」 という映画が放映された(民放で)。
宇宙人が出てくるハリウッド製のCG (コンピューター・グラフィック) 映画らしいので、またスピルバークやルーカスやキャメロンみたいなアホらしいドンパチ映画だろうと考え、録画なんてことはさらさら考えなかったんだけど、つい新聞の解説を読んでしまった。
なんでもヨハネスブルク (!)上空にエイリアンの宇宙船が現われるんだそうだ。
ふつうの映画なら、エイリアンは映画終了の15分前あたりまではむやみに強くて、地球人は一方的に侵略されるはずなんだけど、この映画ではそうではないらしい。
彼らの宇宙船は故障してエンコしているところで、途方にくれたエイリアンたちは地球に対して難民申請をするのである。
笑っちゃう。
SFの常道を完全に逸脱している。
だいたい、宇宙空間をわたって地球にまでやってきたということは、エイリアンは地球よりずっと科学が進んでいると思わなければならない。
かりに彼らがわたしたちの太陽系のどこかからやってきたとしても、地球人はやっと海王星あたりまで無人探査機を飛ばす程度の技術しか持ってないから、やっぱりエイリアンの科学技術のほうがずっと進んでいるはずなのである。
またこの太陽系には地球以外に酸素のある星はひとつもないから、地球の大気はエイリアンたちにとってものすごい有毒なものであるはずだ。
そんなエイリアンが地球人と対等の関係で、難民として扱われるという設定はナンセンスである。
そんなナンセンス設定がおもしろそうと考えて、つい録画してしまった。
いや、おもしろかった。
出てくるエイリアンは海老とゾンビを足して2で割ったみたいなやつで、これはハリウッドSFではめずらしくないけど、なにしろだらしないのである。
難民として地球人に管理されたり、命令されたりしちゃうのである。
エイリアンの好物がネコ缶であるところも可笑しい。
そんな常識はずれの宇宙人を観ているうち、これはまっとうなSFではなく、ユーモアやパロディに満ちた一種の寓話じゃないかと思うようになった。
難民キャンプに収容されたエイリアンが、スラム化した劣悪な環境に置かれたり、地球人と摩擦を起こして差別デモを誘発させたり、犯罪に走ったりゴミ溜めをあさったり、食料を求めて地球人の悪徳商人と交渉するところなんぞは、本物の難民キャンプの実情にもとづいているのではないか。
だとすれば笑って観ちゃ申し訳ない映画ではないか。
ナンセンス映画が成功するカギのひとつは、アホらしいことを登場人物がいかにまじめに演じるかである。
エイリアンの化学物質をあびてじょじょにエイリアン化する主人公を、いかにもそれらしい顔をした学者や医師たちが、うん、これはサンプルとして保存する必要がある、助かりますか、無理でしょう、体中を切り刻みますからなんて、本人の聞こえるところでまじめに話し合う場面なんか、思わずくすくす。
げらげら笑わせるわけではなく、考えると可笑しいというところが、なかなかハイレベルの知性を要求する映画である。
しかし映画の後半になると、いまどきの映画に欠かせないものらしく、やたら派手なドンパチが始まった。
しかもエイリアンそっちのけで人間同士が撃ったり追いかけたり。
そのへんで何がなんだかわからなくなって、いいかげんにせいよというわけで、ブログに書くのもこのへんで終わり。
やっぱりあんまりハイレベルでもなさそう。
PS. この映画は民放の放映だったのでコマーシャルが入る。
観ていたらどこかの会社のCMがあって、短パンの女の子が床にはいつくばってせっせと便器の掃除をしていた。
この子がカワイくて、うん、民放の番組もいいもんだなあと、あらためて思ってしまった。
| 固定リンク | 0
「壮絶の映画人生」カテゴリの記事
- ケイン号の叛乱(2024.04.28)
- 復讐の荒野(2023.12.10)
- エルマー・ガントリー(2022.09.24)
- 地獄の黙示録(2022.09.21)
- 観ました(2022.02.07)
コメント